俊芿

俊芿（しゅんじょう）の人物像と業績

俊芿（しゅんじょう）は、鎌倉時代前期に活躍した真言宗の僧であり、泉涌寺派の宗祖とされています。彼の出自には不詳な点が多く、具体的な家系はわかっていませんが、肥後国飽田郡の出身であることがわかっています。また、彼には我禅という字が与えられ、不可棄という号が名付けられています。俊芿の業績により、彼は後に大興正法国師の勅号を得て、月輪大師（がちりんだいし）という諡号も享けました。

出家と修行の道のり

俊芿は18歳のときに出家し、剃髪をして出家僧としての道を歩み始めました。さらに翌年には大宰府の観世音寺で具足戒を受け、修行を本格的に開始しました。正治元年には、「伝律」の学問を深めるため、中国の宋に渡り、12年の修行の後に日本へ帰国しました。この間、径山の蒙庵元総から禅を学び、四明山の景福寺では如庵了宏から律を、北峰宗印からは天台教学を学ぶなど、幅広い教えを吸収しました。

帰国後、俊芿は北京律（ほっきょうりつ）を設立し、この教えを広めました。宇都宮信房からの支持を受け、彼は仙遊寺を泉涌寺に改名し、再興のための勧進活動を行いました。俊芿の活躍により、後鳥羽上皇をはじめとする多くの皇族や公家、武士たちが彼に帰依し、泉涌寺は信者からの喜捨を集め、堂舎が整備され、御願寺として栄えました。このようにして、泉涌寺は律・密・禅・浄土の四宗兼学の道場として繁栄することとなりました。

書道家としての評価

俊芿は僧侶としての活動だけでなく、書道家としても知られています。彼の書はその独自性が評価され、特に宋代においても高い評価を受けました。俊芿は日本に宋風の新たな書風をもたらし、その影響は後世にまで及びました。彼の筆跡は、泉涌寺に現存する『泉涌寺勧縁疏』と『附法状』の2点が国宝に指定されています。

泉涌寺勧縁疏について

特に注目すべきは、承久元年（1219年）に書かれた『泉涌寺勧縁疏』です。この作品は、仙遊寺を泉涌寺に改めた翌年のものであり、54歳の俊芿が残した重要な文書です。文章と書風がともに優れており、宋代に流行した黄山谷風の行書体の特徴を持っています。作品は5紙1巻からなり、外題には「造泉涌寺勧進疏」と記されています。その大きさは40.8cm×29.3cmで、圧倒的な存在感を誇ります。

まとめ

俊芿はその教えと書によって、鎌倉時代の真言宗の発展に大きく寄与した人物です。彼の業績は、多くの信者を集め、泉涌寺の発展に寄与することとなりました。俊芿の生涯と業績は、日本の宗教史や書道の歴史の中でも特に重要な位置を占めており、彼の影響は今日に至るまで続いています。

もう一度検索