保留名

保留名についての概要

保留名（ほりゅうめい）とは、生物に対する学名の命名において、既存の名が新たな命名規約に従わない場合でも、その慣用名を維持するために用いられる特別な名前のことです。英語では「conserved name」と表現され、通常は「nom. cons.」として略されます。この用語は、日本語の訳としてはやや古い言葉であり、現在では国際藻類・菌類・植物命名規約や国際原核生物命名規約の日本語版では「保存名」、国際動物命名規約では「保全名」という名称が用いられています。

背景

生物の分類群の学名は、優先権の原則に基づき、命名規約に適合する中で最も古く名付けられたものが優先されるべきという文脈から成り立っています。しかし、時間が経つと古く名付けられた学名が発見されたり、分類学上の新しい知見により異なる分類群が統合されたりすることがあり、その場合、命名の正当性が問われることになります。近年の研究成果や文献の再発見により、古い学名が再び浮上することにより、かつて広く認識されていた学名が危険にさらされます。さらに、長い期間にわたり規則に準拠していた学名が新しい規則によって不適格とされる可能性もあります。

しかしながら、こうした学名の変更はいくつもの分野に影響を及ぼし、特に学術界だけでなく、一般社会においても混乱を引き起こすことがあります。そのため、学名の安定を重視する際には、正式な手続きを経て慣用名を使い続けることが可能とされています。

動物学における保留名

動物学において、命名法の安定性を確保するために、命名法審議会が不適格な学名を有効な名称として扱うことができる権限を持っています。例えば、新参の同名を保全し、古い同名を抑制することが可能です。このようにして許可された学名が「保全名」と呼ばれ、それ以外の審議会の決定と共に公式リストに載せられます。また、ある条件を満たすことで、研究者が古い学名の優先権を取り消すこともでき、これを「遺失名」と呼び、慣用名を「擁護名」として扱うことが可能です。

植物学における保存名

植物分野では、命名規約に厳密に従うと無駄な学名の変更が起こることがあるため、特定の学名を保存する手続きが設けられています。この過程を経て得られる学名を「保存名」と呼びます。保存名は、優先権に関するルールを一定程度上書きでき、無効とされていた名称も合法とすることができます。また、文法やスペルの不一致も保存されることが可能です。

たとえば、トマトはリンネによってナス属の一種として名付けられましたが、後にトマト専属の属が設けられ名が広まりました。しかし、現在の命名規約では古い名が必要となったため、1988年にはトマトに関する古い名が廃棄名とされ、慣用名が保存名として認められました。

代替名と細菌学

保存名に類似する用語として、植物の科における「代替名」があります。特定の科名が伝統的に用いられてきた名称と異なる場合でも、それらの名称は批准されることが多く、特定の条件下で使用が許可されます。また、細菌学分野でも特定の学名が保存されることができます。これらの名称は全体の命名規約によって管理され、各分野における学名の安定化を目指しています。

結論

保留名は、生物の命名において安定を図るための重要な仕組みです。研究者や一般社会に与える影響を考慮し、適切な手続きを経て慣用名や保存名を使い続けることは、今後も大切な役割を果たすことでしょう。

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