保釣運動

保釣運動とは

保釣運動（ほちょううんどう）とは、尖閣諸島（中国名：釣魚島）の領有権を中国が主張する運動です。この運動は、中国本土、香港、台湾、そして海外の華人コミュニティを中心に展開されています。1970年代初頭から始まり、現在に至るまで様々な形で活動が行われています。

保釣運動の始まり

1972年の沖縄返還で尖閣諸島の施政権が日本に移ったことに反発し、アメリカに留学していた台湾人学生たちが1970年に「保釣行動委員会」を結成したことが始まりとされています。1971年には、ワシントンD.C.や台北などで抗議デモが行われました。同時期に、台湾と中国が公式に尖閣諸島の領有権を主張し始めたことから、この運動は中国本土だけでなく海外の華人社会にも広がりを見せました。

当初、この運動は中国国民党を支持する右派学生によって組織されましたが、中国共産党支配下の中国大陸でも組織が作られました。この運動には、後に台湾総統となる馬英九も参加していました。

保釣運動の拡大

1996年、日本の右翼団体が尖閣諸島に灯台を建設したことをきっかけに、香港で「保釣行動委員会」が発足しました。さらに、世界中の華人による組織「華人保釣大聯盟」が結成され、領有権を主張する活動が活発化しました。

「華人保釣大聯盟」の発起人の一人である香港人活動家は、尖閣諸島への上陸を試みようとして溺死するという悲劇も起きました。1990年代後半には、香港や台湾の活動家が運動の中心となっていましたが、香港が中国に返還されたことで、民族主義的な動きが強まったという見方もあります。近年では、インターネットを活用した活動も展開されています。

保釣運動の現状

保釣運動は、日本では反日運動と見なされることもありますが、台湾のように言論の自由が認められている地域でも盛んに行われています。中国大陸の大学生の中には、愛国心を示す行動として運動に参加する者もいます。

2003年には、中国で「中国民間保釣聯合会」が結成され、活動が活発化しました。2004年には、メンバーが尖閣諸島に上陸し、2010年の尖閣諸島中国漁船衝突事件では、台湾の活動家が抗議船を出すなど、日本側から反日とみなされる活動が行われています。

これらの活動に対し、中国政府や台湾政府は公式には黙認していますが、領有権主張の国家意思と一致することから、事実上支持していると考えられます。2008年には台湾で「中華保釣協会」が設立され、中国などから資金援助を受けて活動しています。2011年には、世界各地の華人団体が連携し「世界華人保釣連盟」が設立されました。

2012年には、香港の活動家が尖閣諸島に上陸しましたが、日本の海上保安庁に逮捕されました。その後も、香港の活動家が尖閣諸島へ向かう動きがみられますが、香港当局によって阻止されています。

各地域における保釣運動

香港

香港の「保釣行動委員会」は、中国共産党の統治にも反対する民主派団体であり、中国本土への上陸を拒否されるメンバーもいます。香港では、保釣運動の高齢化が進み、参加者は減少傾向にあります。

1970年代には、香港の保釣運動は非常に活発でしたが、天安門事件後は、中国の民主化運動と連動して語られるようになりました。近年では、香港人のアイデンティティが強まり、大中華主義的な価値観を持つ保釣運動への関心が薄れてきています。

台湾

台湾では、中国国民党と民主進歩党の両方が尖閣諸島の領有権を主張しています。台湾には複数の保釣運動団体が存在し、それぞれが活動しています。特に、中華保釣協会は武闘派として知られています。台湾では、尖閣諸島は漁業権と結びつけて捉えられており、2013年には日台漁業取り決めが締結されました。

まとめ

保釣運動は、尖閣諸島の領有権を主張する複雑な運動です。中国、香港、台湾、そして海外の華人社会が関与しており、それぞれの思惑や歴史的背景が絡み合っています。近年では、香港の民主化運動や台湾の漁業権問題など、新たな要素も加わり、その動向が注目されています。

参考情報

中国民間保釣聯合會（中国大陸）
保釣行動委員會（香港）
中華保釣協會（台灣）
世界华人保钓联盟

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