日台漁業取り決め

日台漁業取り決め

日台漁業取り決めは、日本と中華民国（台湾）の間で締結された、台湾および沖縄周辺海域における漁業秩序に関する取り決めです。この取り決めは、日台漁業協定、または日台民間漁業取り決めとも呼ばれます。

概要

1996年6月の国連海洋法条約批准に伴い、日本は周辺国との間で排他的経済水域（EEZ）における境界線策定や漁業協定の締結が必要となりました。台湾との間でも、漁業問題や海域秩序について協議するため、1996年以降、計16回の漁業協議が行われました。

2012年、当時の玄葉光一郎外務大臣は、日台間の経済関係の重要性を強調し、日台民間投資取決めやオープンスカイ協定などの進展を踏まえ、「日台漁業協議」の再開を提案しました。背景には、尖閣諸島国有化を巡り、中国と連携して抗議する台湾の漁船や巡視船による領海侵入など、日台関係の緊張がありました。日本側には「中国と台湾の連携に楔を打ちたい」という意図もあったとされます。

同年年末に成立した第2次安倍内閣もこの協議を推進し、台湾側も漁業関係者からの漁業操業要求に応える必要性から、双方は漁業操業範囲の策定に向けて協力しました。2013年4月10日、財団法人交流協会の大橋光夫会長と亜東関係協会の廖了以会長が台北市で「日台漁業取り決め」に署名し、5月10日に発効しました。

名称

政治的な外交関係がない日本と台湾の間では、政府間協定の形を採らず、民間による取り決めとして「日台漁業取り決め」という名称になりました。取り決め文書の締結は、日本側は財団法人交流協会、台湾側は亜東関係協会という交流窓口団体によって行われました。

漁業操業範囲

台湾は従来、尖閣諸島を含む日本の排他的経済水域に食い込む「暫定執法線」を操業範囲として主張していました。しかし、日本はこの線を一方的な措置として認めず、日本のEEZに進入する台湾漁船を海上保安庁が追い返す事態が続いていました。そのため、日台間の漁業関係は緊張し、漁業協議は事実上停止していました。

2013年の協議では、緯度経度による漁業水域の策定が行われ、北緯27度以南の海域が漁業操業水域として定められました。この水域では、日本と台湾の漁船が操業できます。ただし、魚釣島を含む尖閣諸島周辺の日本の領海は、この取り決めの漁業水域には含まれていません。

日本の水産庁は、法令適用除外となる水域のルール順守のため、沖縄県石垣市に漁業取締船を配備する意向を示しています。

北緯27度以北には、日中漁業協定で定められた「日中暫定措置水域」が隣接しています。

発効後の台湾漁船の拿捕

取り決め発効後も、台湾漁船が取り決め水域外で日本のEEZに侵入し、拿捕される事例が後を絶ちません。これは、取り決めが漁業秩序の確立に必ずしも十分ではないことを示唆しています。

まとめ

日台漁業取り決めは、長年の懸案であった日台間の漁業問題を解決するための重要な一歩となりました。しかし、発効後も課題が残っており、両国間のさらなる協力とルールの遵守が求められています。

関連項目

排他的経済水域
尖閣諸島
* 先島諸島

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