信濃藤四郎

信濃藤四郎について

信濃藤四郎（しなのとうしろう）は、鎌倉時代末期に作られたとされる短刀であり、日本の重要文化財に指定されています。この刀は山形県鶴岡市に位置する致道博物館に所蔵されています。

基本情報

信濃藤四郎は、刀工として名高い藤四郎吉光によって作られたとされています。吉光は、山城国粟田口派の刀工の中でも特に有名で、その技術は短刀や剣において高い評価を受けています。日本の刀剣における重要な存在であり、信濃藤四郎は彼の作品の中でも標準的なサイズに属しますが、やや短めであるという特徴があります。刀身は内反りに加工され、厚みがあるため、一定の威厳を持ち合わせています。

この短刀の名前の由来は、1605年（慶長10年）に徳川家康の家臣である永井尚政によって所有されていたことから来ています。信濃守に任命された尚政は、その後この刀を徳川将軍家に献上し、1633年（寛永10年）には、彼の娘が加賀藩主前田光高に嫁ぐ際に光高に与えられました。

経緯と現存

その後、信濃藤四郎は酒井家に伝承され続けました。歴史的な記録によれば、加賀藩は当時財政的困難を抱えており、その中で本刀は酒井忠勝にまで渡りました。刀剣研究家の福永酔剣によると、後に『享保名物帳』に本作が名を連ねる際には、酒井家からの経緯は記載されていないことが確認されています。

この短刀は、明治維新以降も酒井家に保管されており、1935年（昭和10年）には旧国宝として認定されました。その後、1950年（昭和25年）に文化財保護法が施行され、重要文化財の指定を受けました。しかし、1986年（昭和61年）には盗難に遭い、忍び込んだ犯人は逮捕されたものの、非常に価値のある刀は無事でした。信濃藤四郎は1999年（平成11年）、致道博物館によって買い戻され、現在は同館に保管されています。

作風と技術

信濃藤四郎の刀身の仕様は、全長8寸2分（24.9センチメートル）の刃を持ち、平造りの造りで、裏表には護摩箸の彫刻が施されています。小板目の鍛えは、正確で美しく、地沸と呼ばれる部分は華やかな輝きを放っています。刃文は中直刃とされ、鋭い切れ味と美しさを併せ持っています。帽子部分は小丸形状で、刃文はやや掃きかけています。

また、茎は生ぶで、先端は栗尻となっており、目釘穴は二つあり、表面には「吉光」という銘が刻まれています。致道博物館の専門家たちによれば、この刀の地刃は非常に優れた状態を保っています。

外装

信濃藤四郎は、黒漆塗合口拵（くろうるしぬりあいくちごしらえ）という江戸時代に製作された外装が付いています。この外装の全長は42.5センチメートルです。目貫には江戸の金工師、後藤宗乗によって作られた「赤銅枝茄子」が使用され、柄の部分には黒鮫皮が用いられています。

まとめ

信濃藤四郎は、日本刀としてだけでなく、その歴史や技術においても非常に重要な存在であり、今もなお多くの人々に愛されています。致道博物館においてその美しさと歩んできた歴史を感じながら、刀剣の魅力を味わうことができるのです。

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