前田光高

前田光高（まえだ みつたか）

前田光高は、江戸時代初期の大名で、加賀藩の第4代藩主です。加賀前田家4代当主であり、藩祖・前田利家の嫡孫にあたります。父は第3代藩主の前田利常、母は2代将軍徳川秀忠の娘である珠姫です。徳川家康と浅井長政・お市夫妻の血を引く人物でもあります。

生涯

元和元年（1616年）に、前田利常の長男として生まれました。幼名は犬千代と名付けられました。寛永6年（1629年）に元服し、母方の叔父にあたる将軍徳川家光から「松平」の名字と偏諱である「光」の字を与えられ、松平筑前守光高と称しました。

父の利常は、光高が「光」の字を諱の下に置くことを避けるため、「利常」と改名しました。寛永16年（1639年）に父・利常の隠居に伴い家督を継ぎましたが、富山藩、大聖寺藩の分封と利常の隠居領確保のため、加賀藩の石高は歴代藩主の中で最少の80万石となりました。

寛永20年（1643年）には、嫡男の犬千代（後の前田綱紀）が誕生しました。この知らせを受けた直後の参勤で、120里の道のりをわずか6泊7日で歩いたという記録が残っています。

正保2年（1645年）に、大老酒井忠勝を招いた茶会の席で突然倒れ、急逝しました。享年31歳（満29歳没）。父の利常に先立つ死でした。家督は幼少の嫡男・犬千代（綱紀）が継ぎましたが、当初は祖父である利常が後見を務めました。

法名は陽廣院殿將巌天良大居士。墓所は石川県金沢市野田町の野田山墓地です。

人物・逸話

徳川家光の甥: 第3代将軍徳川家光は母方の叔父にあたり、家光にはなかなか男子が生まれなかったため、一時、光高を後継者にしようとしたという逸話があります。
美貌の持ち主: 両親が美男美女で知られていたため、光高もかなりの美男子だったとされ、当時、家光の衆道（男色）相手だったという噂も流れていました。
剛力の持ち主: 腕力が非常に強く、指で碁石を碁盤に押し込んだという逸話が残っています。
多才な人物: 武芸に秀でていただけでなく、和漢の学問にも優れ、『遺訓』『銘歌』『一本種』『自論記』など多くの著作があります。
幕府への忠誠: 秀忠の外孫であるためか、幕府への忠誠心が厚く、父の利常と対立することも少なくなかったと伝えられています。
下戸: 酒が飲めなかったという逸話も残っています。隣藩の福井藩主・松平忠昌は酒豪でしたが、光高の突然の死を聞いた家光が忠昌の健康を心配し飲酒を控えるように伝えたところ、忠昌は狂歌で返答しました。「向い（の屋敷）なる加賀の筑前（前田筑前守光高）下戸なれば　三十一で昨日死にけり」。この歌を受け取った家光は、忠昌だから仕方ないとそのままにしたとされています。

官職および位階等の履歴

寛永6年（1629年）4月23日 - 元服し、将軍徳川家光の偏諱を受け光高と名乗る。正四位下左近衛権少将兼筑前守に叙任。
寛永16年（1639年）4月23日 - 家督を継ぐ。

系譜

父：前田利常（1594年 - 1658年）
母：珠姫（1599年 - 1622年） - 徳川秀忠の次女
正室：大姫（1627年 - 1656年） - 徳川家光の養女、徳川頼房の四女
長男：前田綱紀（1643年 - 1724年）
次男：万菊丸（1645年 - 1649年）

脚注

注釈

出典

参考文献
山本博文『遊びをする将軍・踊る大名』教育出版〈江戸東京ライブラリー〉、2002年。ISBN 4316358901。
* 若林喜三郎『前田綱紀』（新装版）吉川弘文館〈人物叢書〉、1986年。ISBN 4-642-05058-2。

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