信貴山玉蔵院

玉蔵院（ぎょくぞういん）

奈良県生駒郡平群町にある信貴山に位置する玉蔵院は、信貴山真言宗の大本山であり、同じく信貴山に鎮座する朝護孫子寺の主要な塔頭寺院の一つです。古くから信仰を集め、現在では訪れる人々のための宿坊も運営しています。

名称の由来と歴史

玉蔵院という名称は、平安時代に遡る伝説に由来すると伝えられています。新義真言宗を開いたことで知られる覚鑁上人が、崇徳天皇の時代に信貴山で修行をされていた際、この山の守護神である毘沙門天から「真陀摩尼（ちんたーまに）」と呼ばれる如意宝珠を授けられたとされています。この尊い宝珠をこの寺に大切に蔵めたという伝承から、「玉蔵院」と呼ばれるようになったと言われています。

近代においても、玉蔵院は歴史の表舞台に登場しました。1911年（明治44年）5月18日には、伏見宮家の文秀女王がこの寺に宿泊されました。女王が滞在された部屋は、その後「伏見宮文秀女王殿下玉座」として長く記憶され、多くの人々に語り継がれる場所となりました。さらに、1937年（昭和12年）2月26日には、大阪・南地の芸妓およそ60名が、自分たちの待遇改善を求めてこの玉蔵院に立てこもるという異例の事件が発生し、当時の社会に大きな波紋を広げました。

境内と主な見どころ

玉蔵院の境内には、信仰の対象や歴史を感じさせる様々な建物や像が点在しています。

融通堂: 寺院の名称の由来ともなった、伝説の如意宝珠を祀る重要な堂宇です。人々の願いを叶え、融通を利かせると信じられています。
三重塔: 境内にそびえる三重塔は、寺院の景観に荘厳さを添えています。
地蔵菩薩坐像: 「日本一大地蔵尊」として親しまれる、大きな坐像の地蔵菩薩です。その圧倒的な存在感は、訪れる人々に安らぎを与えます。
金集弁財天: 財運や金運にご利益があるとされる弁財天を祀る堂宇です。
浴油堂: ここには秘仏である双身毘沙門天が祀られています。毘沙門天が夫婦や男女のように寄り添う珍しい姿をしており、特別な祈祷が行われる場所です。
富貴閣: 境内の建物の一つで、かつては特別な用途に使われていた可能性もあります。
庫裏: 寺院の台所や事務を担う建物で、宿坊としての機能の中心となります。
表門: 寺院の入り口を飾る門で、参拝者を迎えます。

玉蔵院は、如意宝珠の伝説が息づく名称の由来、近代の歴史的なエピソード、そして様々な仏像や堂宇が織りなす独自の魅力を持っています。信仰の場としてだけでなく、歴史や文化に触れる場所として、また宿坊として、訪れる人々に様々な体験を提供しています。

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