信長の野望・覇王伝

『信長の野望・覇王伝』は、1992年 12月4日に光栄（現コーエーテクモゲームス）から発売された歴史シミュレーションゲームです。同社の人気シリーズ『信長の野望』の第5作目にあたり、戦国時代を舞台に、プレイヤーは大名となり全国統一を目指します。

ゲーム概要

本作では、全国約60ヶ国に存在する大名家の中から一つを選択し、天下統一を目標とします。基本的なゲームシステムは前作までを踏襲していますが、国取りから城取りへの変更、対等同盟に加えて従属同盟・優位同盟の導入など、戦略性が大きく向上しました。また、コンピュータの思考にはニューラルネットワークが採用されており、より高度な戦略性が求められます。

開発は光栄が担当し、プロデューサーはシブサワ・コウ、音楽は前作『信長の野望・武将風雲録』に引き続き菅野よう子が担当しました。

プラットフォーム展開

PC-9801版を皮切りに、様々なパソコン機種やスーパーファミコン、メガドライブ、メガCDなどの家庭用ゲーム機にも移植されました。シリーズ初のパワーアップキットも発売されましたが、PC-9801版のみで他の機種では長く発売されませんでした。後に携帯電話ゲームとしても配信され、Windows版では2013年発売の『「信長の野望」歴代タイトル全集』にパワーアップキット版が収録されています。また、PC-9801版ではシリーズで初めてハードディスクへのインストールに対応しました。

ゲーム内容

基本システム

ゲームの基本は、全国に散らばる大名家から一つを選び、天下統一を目指すというものです。本作では、それまでの国取りから城取りへと変更され、一つの国に複数の城（本城と支城）が存在するようになりました。本城では支城に対して評定を開き、命令を下すことが可能です。これにより、前作よりも大名数が多くなり、より複雑な戦略が求められるようになりました。また、東北地方の区分けが変更され、より史実に近い形となっています。

従属大名システム

本作では、対等同盟に加え、従属同盟・優位同盟という新たな同盟関係が導入されました。優位同盟を結んだ大名は、従属させた先に援軍を強要することができ、逆に従属同盟を結んだ場合は、従属先に援軍を強要されます。これにより、武力統一だけでなく、同盟による統一も可能となりました。この従属大名システムは、一時的にシリーズから姿を消しますが、『嵐世記』以降で復活します。ただし、『嵐世記』以降では、従属大名による統一はできません。

パラメータ

武将の能力パラメータは、「政治」「戦闘」「智謀」「采配」「野望」「義理」「相性」の7つです。本作では、「智謀」が新たに導入され、戦争関連のパラメータは「戦闘」と「采配」に分割されました。兵士のパラメータには、従来の「訓練度」に加え、防御に影響する「士気」が登場しました。また、過去の作品にあった「兵忠」は廃止されています。

足軽・雑兵

兵士には、金銭を支払って登用し訓練で強化できる「足軽」と、合戦の際に臨時で登用できる「雑兵」が存在します。雑兵は無償で登用できますが、能力は低く、数合わせの意味合いが強いです。また、本作では内政パラメータ「貫高」が、その城で登用できる最大兵数となっており、より多くの兵士を雇うためには開墾が必要となります。

朝廷・官位

本作では、朝廷への外交工作が可能となり、献金を重ねることで官位を叙任されるようになりました。官位は、大名だけでなく、家臣にも与えることができ、論功行賞に活用することができます。これにより、前作まで通称で表示されていた武将が実名で表示されるようになり、より史実に近い表現となりました。

論功行賞

配下の忠誠度は数値で明示されませんが、「気合」の回復度で確認できます。命令を繰り返すと勲功が溜まり、放置すると忠誠度が下がります。忠誠度が低いと、内政などの働きが悪くなり、離反することもあります。論功行賞では、知行の加増、アイテムの授与、官位の斡旋などを行い、忠誠度を上げることができます。

隠居・婚姻

本作では、大名が隠居することが可能になり、後継者を指名することができます。また、家臣に姫を嫁がせて一門衆に加えることもできます。

凸型戦闘ユニット

合戦では、部隊の方向の概念が加わり、戦術が重要となりました。凸型ユニットによる戦闘表示は印象的でしたが、その後の作品には長らく取り入れられず、『創造』で再び採用されました。

シナリオ

本作には以下の3つのシナリオが用意されています。

シナリオ1 - 信長出世（1551年）
シナリオ2 - 天下布武（1568年）
シナリオ3 - 平安楽土（1582年）

他機種版

家庭用移植版は、セーブデータ容量の関係で、一部要素が削除されています。FM TOWNS版では、武将たちのメッセージが音声入りとなっており、Windows版では、一部BGMが削除されています。また、Windows版はWindows XPでの動作が保証されていませんでしたが、後にWindows 8に対応したバージョンが発売されました。

パワーアップキット

『信長の野望』シリーズ初のパワーアップキットは、PC-9801版のみ単体で発売されました。Windows版では、『「信長の野望」歴代タイトル全集』で入手できます。

パワーアップキットでは、以下の要素が追加されました。

コンピュータ思考の強化
新シナリオの追加
イベントの追加
武将の能力編集機能
新武将登録機能

音楽

本作の音楽は、全曲菅野よう子が作曲しており、ゲーム本編とは別個に評価が高く、テレビ番組のBGMにも使用されています。

評価

本作は、ゲーム雑誌やユーザーからの評価も高く、特にメガCD版の音楽は絶賛されました。一方で、ゲームの難易度が高く、特に籠城戦が長引くことを指摘する意見もありました。

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