倉敷地区

倉敷地区

倉敷地区は、岡山県倉敷市の中心市街地に位置し、旧倉敷村を中心としたエリアです。この地域は、江戸時代には倉敷代官所が置かれ、政治・経済・文化の中心として発展しました。現在では、美しい町並みが残る美観地区を中心に、観光地としても人気を集めています。

概要

倉敷地区は、倉敷市が策定した中心市街地活性化基本計画における主要エリアであり、旧倉敷村の大部分を占めます。この地域は、市立倉敷西小学校区および倉敷東小学校区（新田地区を除く）を範囲とし、一部隣接地区（川西町、稲荷町など）も含みます。地区の中央には鶴形山という小高い丘があり、北側には倉敷駅、南側には加須山丘陵が位置します。また、鶴形山の西南を起点として倉敷川が南へと流れています。

かつて万寿村や老松村だった美和、幸町、昭和、倉敷駅北口周辺も、市街化が進み、倉敷地区と一体化しています。また、倉敷市基本計画では中央一〜二丁目の北部のみが範囲に含まれていますが、ここでは説明のため、南部や船倉町、向山も含めて解説します。

江戸時代に干拓によって新田が開発される以前、倉敷村と呼ばれていた地域が、現在の倉敷地区の大部分を占めています。倉敷の地名は、年貢米の集積地であったことに由来し、古くから周辺の荘園の米が集められる場所でした。近世には、周辺の天領の年貢米が集積され、備中松山藩の物資中継拠点として繁栄しました。

歴史

中世以前

倉敷周辺は、古代には「阿智の海」と呼ばれる海域で、高梁川の河口部に位置していました。古代には備中国窪屋郡阿智郷の一部と推定され、瀬戸内海運の要所として栄えました。鶴形山に鎮座する阿智神社は、航海安全を祈願する人々から信仰を集めていました。また、この地は加子浦として指定され、文禄・慶長の役では加子役銀を上納しました。

中世後期になると、高梁川の沖積作用によって干潟が広がり、天正13年には宇喜多秀家の命により岡利勝が堤防を築き、大規模な干拓事業が行われました。これにより、倉敷は陸続きとなり、現在の倉敷市街地北部の平野部が形成されました。また、高梁川と海域を結ぶ運河として倉敷川が掘削され、内陸港としての機能を持つようになりました。

永禄9年の記録には「くらしき」から塩飽まで船賃が支払われたことが記されており、この頃にはすでに瀬戸内航路の基幹港として機能していました。また、天正8年には毛利方の居城（倉敷城）が築かれていたことが確認されています。

近世

関ヶ原の戦いの後、倉敷村は江戸幕府の直轄領（天領）となり、備中松山城に置かれた代官所の管轄下に入りました。松山代官所は、高梁川の水運を利用して倉敷湊を年貢米の集積地として活用し、倉敷村は重要な拠点として発展しました。慶長19年には、倉敷に陣屋が設けられ、大坂冬の陣の兵糧積出しが行われました。

延宝5年の倉敷全図によると、町割りは本町筋、中船元町、土手町、井上町、新町、船場町、向船場町、弓場町に分かれており、家数は364軒でした。元和元年には、倉敷村は備中松山藩の領分となりましたが、その後、幕府領に戻り、代官が支配しました。

元和元年には倉敷村南沖合を干拓し、倉敷新田を造成。同8年にはその南沖合をさらに干拓し、後新田を開発しました。両新田とも倉敷村の枝村となっています。

天和3年以降、倉敷村とその枝村の領地は目まぐるしく変化しましたが、最終的には幕府領として幕末を迎えます。延享3年には倉敷代官所が設置され、その規模を拡大しました。元禄8年の記録によると、倉敷には木戸や番所が設けられ、定期市が開催され、多くの人々で賑わいました。

天保5年には倉敷代官の古橋新左衛門が郷学明倫館を開設しましたが、慶応2年には第二騎兵隊脱走兵による倉敷代官所焼き討ち事件が発生しました。

近代

慶応4年の廃藩置県により倉敷県が設置され、倉敷代官所が県庁となりましたが、後に周辺と統合され小田県になりました。明治9年には枝村の新田村などを編入し、翌10年には村内に窪屋郡役所が設置されました。

明治20年には、旧倉敷代官所跡に倉敷紡績が開業しました。明治24年には山陽鉄道が開業し、倉敷駅が開設されました。以降、紡績業と商業の発展に伴い市街化が進行し、岡山県南西部の中枢都市、岡山県第2の都市として発展を遂げました。明治24年には町制が施行され、倉敷町となりました。

昭和2年に倉敷町、万寿村、大高村が合併し、新・倉敷町が設立され、翌3年に市制を施行して倉敷市となりました。その後、周辺の町村を編入合併し、昭和42年に倉敷・玉島・児島の3市が合併し、現在の倉敷市に至っています。

地域

倉敷地区は、以下のエリアに分かれています。

倉敷

旧倉敷村域にあたる地区で、地区の大部分を占めます。

阿知

JR倉敷駅南側に広がる地区で、商店街を形成しています。かつては倉敷で最も活況を呈していましたが、近年は郊外型店舗の影響により空洞化が問題となっています。しかし、朝市などのイベントが開催され、賑わいを取り戻しつつあります。

鶴形

倉敷駅南東に位置し、商店や企業、官公庁、住宅などが混在する地区です。

川西町

倉敷中心市街地西部に位置し、旧国道沿いには商店が、中南部には歓楽街が形成されています。

稲荷町・南町

倉敷中心市街地南西端に位置し、商店や企業、住宅が混在しています。

本町・東町周辺

本町

鶴形山の南麓に位置する古くからの商業地区で、美観地区として知られています。江戸時代には倉敷代官所が置かれ、門前町や陣屋町として栄えました。倉敷川沿いには白壁の土蔵造りの町屋が並び、美しい景観を作り出しています。

東町

鶴形山の南麓から東麓に位置し、本町と共に美観地区を形成しています。大きな家屋が多く残っており、歴史を感じさせる街並みが特徴です。

中央

倉敷中心市街地南部に位置し、倉敷川上流の西岸に広がります。北部には美観地区の一部があり、南部には倉敷市役所や文化施設が集まっています。中心市街地と郊外の中間にあたり、北部には歴史的な町並みが、南部には郊外型の店舗が見られます。

船倉町

倉敷市街地南部に位置し、倉敷川沿いにあります。江戸時代には倉敷代官所の米蔵があったことが地名の由来です。

向山

倉敷市街地南方に位置する丘陵地で、自然公園や住宅地、墓地などがあります。かつては源平合戦の舞台にもなりました。

町区の変遷

かつての町区は、江戸時代末期の倉敷村の町割を元に定められ、現在でも地域住民の間で通称や小字として使われています。

御船町

現在の中央一丁目南部と同二丁目南部にあたる地区で、倉敷港として水運の拠点でした。

住吉町

現在の中央二丁目中部にあたり、大原農業研究所や倉敷天文台がありました。

前神町

現在の中央一丁目中部に位置し、倉敷川沿いに問屋や仲買店が立ち並びました。現在は美観地区の一部となっています。

新川町

現在の中央一丁目北部・二丁目北部および阿知2丁目南西端の一部に該当し、新田用水と倉敷川を結ぶ水路がありました。現在、新川は埋め立てられています。

向市場町

現在の本町ほぼ全域にあたり、倉敷川東岸の商店街として栄えました。倉敷アイビースクエアが立地しています。

平和町

現在の阿知三丁目西部に位置し、一番街商店街がありました。

浜田町

現在の阿知一丁目東部・阿知二丁目北部の一部にあたり、総社道が通っていました。

戎町

現在の阿知二丁目北部に位置し、えびす通り商店街がありました。

旭町

現在の鶴形一丁目全域、同2丁目北部の一部、阿知二丁目北西部の一部にあたり、岡山県立高等女学校がありました。

宮坂町

現在の鶴形二丁目のおおむね全域と阿知二丁目西部の一部にあたり、倉敷尋常高等小学校がありました。

元町

現在の阿知2丁目西部・同3丁目東部にあたり、元町筋として賑わいました。

栄町

現在の阿知一丁目の西部以外・同三丁目北部の一部・同二丁目北部の一部にあたり、倉敷駅前として発展しました。

美和周辺

旧万寿村域で、官公庁や医療機関が多く立地しています。

美和

鶴形山の東北にあたり、倉敷中央病院があります。

幸町

JR山陽本線の南側に位置し、倉敷税務署などの官公庁があります。

昭和

（提供された情報には詳細がありません）

倉敷駅北口周辺

（提供された情報には詳細がありません）

人口・世帯数

（提供された情報には詳細がありません）

郵便番号

以下は、倉敷地区の主な郵便番号です。

阿知 - 710-0055
鶴形 - 710-0056
美和 - 710-0052
東町 - 710-0053
本町 - 710-0054
中央 - 710-0046
船倉町 - 710-0045
向山 - 710-0044
川西町 - 710-0821
稲荷町 - 710-0822
南町 - 710-0823
石見町 - 710-0814
幸町 - 710-0051

学区

小学校

倉敷市立倉敷東小学校：阿知一丁目・二丁目（旧新川町分・旧阿知町分を除く）・三丁目（旧阿知町分を除く）、昭和二丁目、鶴形一 - 二丁目、本町（旧向市場町分を除く）、幸町、美和一 - 二丁目、東町
倉敷市立倉敷西小学校：阿知二丁目（旧新川町分・旧阿知町分）・三丁目（旧阿知町分）、本町（旧向市場町分）、中央一 - 二丁目、船倉町、向山
倉敷市立老松小学校：川西町、稲荷町、南町、日吉町、石見町

中学校区

倉敷市立東中学校：阿知一丁目・二丁目（旧新川町分・旧阿知町分を除く）・三丁目（旧阿知町分を除く）、昭和二丁目、鶴形一 - 二丁目、本町、幸町、美和一 - 二丁目、東町、中央一 - 二丁目（それぞれ一部除く）、船倉町、向山
倉敷市立西中学校：阿知二丁目（旧新川町分・旧阿知町分）・三丁目（旧阿知町分）、中央一 - 二丁目（それぞれ一部）、川西町、稲荷町、南町、日吉町、石見町

主要施設

教育・保育施設

倉敷中央看護専門学校 - 美和
山内服飾専門学校 - 美和
倉敷ビジネス専門学院 - 美和

公的施設

倉敷税務署 - 幸町
法務合同庁舎 - 幸町
裁判所合同庁舎 - 幸町

医療施設

倉敷中央病院 - 美和
しげい病院 - 幸町

商業施設

天満屋 倉敷店 - 阿知

参考文献

巌津政右衛門『岡山地名事典』（1974年）日本文教出版社
岡山県大百科事典編集委員会『岡山地名事典』（1979年）山陽新聞社
渡辺光・中野尊正・山口恵一郎・式正英『日本地名大辞典2 中国・四国』（1968年）朝倉書店
下中直也『日本地名大系第三四巻 岡山県の地名』（1988年）平凡社
黒田茂夫『県別マップル33 岡山県広域・詳細道路地図』（2010年）昭文社

関連項目

倉敷支配所
倉敷川
倉敷美観地区
新田 (倉敷市)
万寿地区
老松
倉敷町
美作倉敷

外部リンク

倉敷市
中心市街地活性化基本計画　内閣総理大臣認定/倉敷市
倉敷市立倉敷東小学校
倉敷市立倉敷西小学校

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