倉田薫

倉田 薫

倉田薫（くらた かおる）氏は、日本の政治家として、特に大阪府池田市の市長を複数期にわたり務めたことで知られています。1948年に池田市で生まれ、地元の大阪府立池田高等学校、そして関西大学法学部で学びました。大学卒業後は池田市役所に勤務しましたが、数年で退職し、地域活動に注力するようになります。池田青年会議所の理事長を務めるなど、若い頃から地域のリーダーとして活動しました。

政治家としての歩み

倉田氏の政治家としてのキャリアは、1975年に26歳で池田市議会議員選挙に当選したことから始まりました。市議を5期20年務め、この間には池田市議会議長も経験しています。1995年5月には池田市長選挙に無所属で立候補し、初当選。以後、第16代から第19代まで4期連続で市長を務めました。

市長在任中、倉田氏が直面したのは池田市の深刻な財政問題でした。1998年度決算では、市の経常収支比率が大阪府内で最悪、全国でも極めて高い水準にあり、財政再建団体への転落が懸念される状況でした。これに対し、倉田市政は徹底した行財政改革を断行。職員数の削減や事業の見直しなどを積極的に進め、その結果、2010年までの10年間、連続で市財政の黒字化を達成しました。この実績は、地方自治体の財政健全化の事例として注目されました。

また、大阪府市長会会長や全国市長会副会長を務めるなど、府内の市町村長を牽引する存在でもありました。大阪府知事（当時）の橋下徹氏とは、府の補助金削減に対して強く反論したり、伊丹空港の廃港論や水道事業統合問題で自身の考えを表明したりと、広域行政に関しても積極的に関わりました。

大阪府知事選挙への挑戦

2011年、橋下徹知事が辞職して大阪市長選挙へ立候補を表明したことを受け、倉田氏は大阪府知事選挙への出馬を決意します。大阪維新の会が主導する当時の府政運営に対して「卒維新」「チェンジ」を掲げ、無所属で立候補しました。府内の複数の市町村長の支援を得ようと試みましたが、支援表明者の署名を巡って混乱が生じる一幕もありました。選挙では、大阪維新の会公認で立候補した松井一郎氏に約80万票の大差で敗れ、落選しました。

政界引退と返り咲き、そして再度の退任

知事選落選後、自身の市長辞職に伴う池田市長選挙には立候補せず、副市長を務めていた小南修身氏を後継に指名し、政界引退の意向を示しました。しかし、2015年、池田市政が停滞しているとして、かつて自身が後継指名した現職の小南氏に対抗する形で再び市長選挙への出馬を表明。主要政党の推薦を受けた現職らを破り、5期目の当選を果たしました。

5期目就任後も、地域分権制度の推進や公共資産マネジメントなど、地方自治の課題解決に向けた取り組みを進めました。しかし、2019年、任期を8ヶ月残して突然辞職します。これは市長選挙を統一地方選挙と同日程で行うための措置であったと説明しました。この際、長男を後継候補として擁立しましたが、「世襲」や「突然の辞職」に対する批判もあり、長男は落選。倉田氏自身も後に「判断ミスだった」と振り返っています。

その他の活動と評価

政治活動以外にも、学校法人関西大倉学園の理事長や、兵庫県保育協会理事、関西大学法学研究所顧問など、教育・地域振興分野でも幅広く活動しました。地方政治家育成塾「薫風政治塾」を設立し、後進の育成にも尽力しています。また、自身の政治哲学や経験を記した著書を複数出版しています。

長年の地方自治への貢献に対し、池田市有功賞や大阪府知事表彰、全国市長会永年勤続功労表彰などを受けており、2017年には地方自治法施行70周年記念で総務大臣表彰、2020年には旭日中綬章を受章しています。

倉田氏の政治家人生は、池田市の財政危機からの再生という大きな功績を残す一方で、大阪府知事選への挑戦や、引退からの返り咲き、そして突然の退任といった波乱に富んだものでした。そのダイナミックな政治手法と、地方自治のあり方に対する独自の視点は、多くの議論を呼びました。

受賞歴・栄典

1985年：池田市有功賞
1990年：大阪府知事表彰（地方自治功労）
2006年：全国市長会永年勤続功労表彰
2017年：地方自治法施行70周年記念総務大臣表彰
2020年：旭日中綬章

主な著書

『首長の使命』
『首長の戦略』
『拝啓 大阪府知事 橋下徹様』
* 『この国の未来を救う玉手箱』

これらの活動や実績を通じて、倉田薫氏は大阪府北摂地域の政治史に大きな足跡を残しました。

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