中村書店

中村書店の歴史と業績

中村書店は、かつて存在した日本の出版社で、特に昭和期の戦前・戦後にかけて、赤本漫画（貸本漫画）の版元として名を馳せました。そのルーツは、1880年代に菅谷與吉が創業した「日吉堂」に遡ります。

創業から分離、そして中村書店へ

1880年代後半、菅谷與吉が東京に「日吉堂」を創業。1899年頃、「日吉堂」は菅谷の「日吉堂本店」と中村惣次郎の「日吉堂」に分かれ、後者が「中村日吉堂」となりました。これが、後に「中村書店」へと発展します。

1912年頃には、既に「中村書店」の名前で共同出版・発売を行っていた記録が残っており、この頃には出版社としての基礎が確立していたと考えられます。

戦前：ナカムラマンガライブラリーの誕生

1933年、「ナカムラマンガライブラリー」（後の「ナカムラ繪叢書」）の刊行を開始。大城のぼる、謝花凡太郎、新関青花ら当時気鋭の漫画家を起用し、『冒険ターちゃん』や『びっくり突進隊』などの人気作品を世に送り出しました。

「ナカムラマンガライブラリー」は全70冊、「ナカムラ繪叢書」は全30冊に及び、小熊秀雄が編集顧問として参加した『火星探検』は、手塚治虫らに大きな影響を与えたとされています。これらの作品は、書店ではなく、駄菓子屋や縁日などで販売され、子どもたちに親しまれていました。

戦後：有限会社化とナカムラマンガシリーズ

第二次世界大戦により活動を一時停止しましたが、1947年頃に有限会社として再出発。「ナカムラマンガシリーズ」をスタートさせ、1959年頃までに400冊を超える漫画を発行しました。謝花凡太郎、新関健之助、オオトモヨシヤス（後の大友康匠）、わたなべまさこ、井上智など、多くの漫画家が同社からデビューしています。

中村書店の特徴

中村書店の漫画は、当時の子どもたちにとって貴重な娯楽であり、その作品群は、後の漫画界に大きな影響を与えました。

特に、小熊秀雄が原作を担当し、大城のぼるが作画した『火星探検』は、SF漫画・科学漫画の先駆けとして、漫画史に名を残しています。また、「ナカムラマンガライブラリー」や「ナカムラマンガシリーズ」は、戦前の日本の漫画文化を知る上で、重要な資料となっています。

復刻版と再評価

1980年代以降、大城のぼるの『火星探検』や『愉快な鉄工所』などの作品が復刻され、中村書店の作品は再び注目を集めています。

2005年には、小学館クリエイティブがこれらの作品を復刻し、多くの人々に再評価されるきっかけとなりました。また、小熊秀雄の漫画作品も、近年になって復刻が進められています。

中村書店の主な出版物

ナカムラ・マンガ・ライブラリー

1933年刊行開始。
愉快な探険隊
チン太二等兵
しろちび水兵
忍術建チャン
びっくり突進隊
冒険ターちゃん
猛獸國そこぬけ騒動
サーカス豆ちゃん

...など、全70冊。

ナカムラ繪叢書

ドウブツ學校
象さん豆日記
大陸合笑隊
海陸たんけん隊
坊やの密林征服
ほがらか親善便り
まんが大陸日記
愉快な子熊
アフリカ探険
コドモ海洋丸
火星探険
南極のペンちゃん
小馬ひん助
まんが良寬さま
まんが北極探険
火打箱
コドモ新聞社
ぼくらの燈臺
愉快な鐡工所
野豚ものがたり
不思議な国印度の旅
仲よし日記帳
子供アジア號
勇士イリヤ
五少年漂流記
繪物語 戰ふ勇太
雪國の兄弟
繪物語 空の中隊
繪物語 小犬の從軍
繪物語 富士の山

...など、全30冊。

終わりに

中村書店は、昭和期の漫画文化において、重要な役割を果たした出版社の一つです。その作品群は、今もなお、多くの人々を魅了し続けています。

この文章が、中村書店の歴史と作品を理解する一助となれば幸いです。

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