倶利伽羅峠

倶利伽羅峠：歴史と交通の要衝

富山県と石川県の県境に位置する倶利伽羅峠は、古来より北陸地方を東西に結ぶ交通路として重要な役割を担ってきた歴史深い峠です。砺波山の一部を成すこの峠は、東側に砺波平野、西側に金沢平野を望む、両県を分ける地理的な境界となっています。北には天田峠があり、広義にはそちらも含めて倶利伽羅峠と呼ぶこともあります。

古代の交通路から近代交通網へ

古代より北陸道の一部として利用され、人々の往来を支えてきた倶利伽羅峠。その歴史は、寿永2年（1183年）に源平合戦の激戦地となったことにまで遡ります。この倶利伽羅峠の戦いは、日本史における重要な出来事として広く知られています。

明治時代に入ると、北陸道を継承する国道20号（現在の国道8号の一部）が開通。しかし、急峻な坂道が難所となり、明治天皇の北陸巡幸の際、輿が通れないことから、北側の天田峠が改修され、国道がそちらに切り替えられました。その後、1899年の北陸本線富山延伸時には、天田峠下にトンネルが掘られ、これが現在の「倶利伽羅トンネル」として利用されることになります。

天田峠を越える国道は、勾配11.3%、ヘアピンカーブの連続、幅員7.0mと、特に積雪時には交通維持が困難な道路でした。そこで、北陸本線の勾配緩和を目的として、1954年に新しいトンネル（現在のあいの風とやま鉄道線の一部、全長2,459m）が貫通しました。これにより、補助機関車による牽引が不要となり、旧トンネルは1967年に国道8号のトンネルとして転用されました。天田峠越えの旧道は、現在では石川県道・富山県道286号刈安安楽寺線となっています。倶利伽羅峠を越える旧道は、1995年に建設省（現国土交通省）の歴史国道に選定されています。また、2009年には石川県の史跡にも指定されています。

倶利伽羅トンネルと新倶利伽羅トンネル

現在の国道8号を通る倶利伽羅トンネルは、全長957mの対面通行2車線で、開通当時は長大なトンネルでした。防火設備や、交通量増加に伴う排気ガス処理のための換気装置（パナソニック製ジェットファン初号機）も設置されています。2015年度の1日あたりの交通量は約2万台と、国道8号の県境区間では最も交通量が多い区間となっています。

北陸新幹線の建設にあたっては、当初は倶利伽羅トンネルよりも北側に加越トンネルが計画されていましたが、ルート変更により放棄され、倶利伽羅トンネル近傍に「新倶利伽羅トンネル」が1996年に貫通しました。新たな新ルート整備計画では、富山側に1号トンネル（延長1,870m）、石川側に2号トンネル（延長430m）を建設する計画で、2019年にはルートが決定していますが、開通時期は未定です。

周辺と歴史的意義

倶利伽羅峠周辺には、倶利伽羅不動寺があり、源平合戦で消失した後、源頼朝によって再建された古刹です。地名や駅名（IRいしかわ鉄道・あいの風とやま鉄道 倶利伽羅駅）の由来にもなっています。

倶利伽羅峠は、古代から現代まで、交通路として重要な役割を担い、幾多の歴史的出来事を経てきた場所です。その歴史と自然が織りなす景観は、今もなお人々の心を惹きつけてやみません。

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