備中兵乱

備中兵乱：戦国時代の終焉と地方大名の興亡

備中兵乱は、天正年間に備中国（現在の岡山県西部）を中心に勃発した戦国時代の戦いです。この戦いは、備中の戦国大名・三村元親と、中国地方の覇権を争う毛利氏との間で繰り広げられました。宇喜多氏も一部関与しましたが、実質的には三村氏と毛利氏の対立構造が中心でした。この戦いの記録としては、『備中兵乱記』や『中国兵乱記』などが現存しており、当時の状況を伝えています。

戦乱前夜の備中

戦国時代前期、備中国は小領主が割拠し、大内氏や尼子氏といった有力大名が、各地の小領主を巻き込みながら勢力争いを繰り広げていました。1533年、猿掛城主の庄為資が尼子氏と結び、備中松山城周辺を支配していた上野頼氏を破り、この地を拠点としました。その後、三村氏が台頭し、尼子氏と対立する毛利氏と連携。三村家親の時代には、庄氏を追放し備中松山城を本拠地としました。三村氏は備中のほぼ全域と備前の一部を支配下に収めるまでになりました。

しかし、1566年、三村家親が宇喜多直家によって暗殺されるという事件が起こります。後を継いだ元親は、父の弔い合戦と称して約2万の兵で備前に侵攻しましたが、宇喜多直家の策略により大敗を喫しました。1568年には、毛利氏が九州へ侵攻した隙をついて、宇喜多氏が備中に侵攻を開始。備中松山城を守る庄高資や斉田城主・植木秀長らが宇喜多氏に寝返ります。これに対し、毛利氏は毛利元清を派遣し、猿掛城を奪還、さらに備中松山城を攻撃し庄氏を追い落としました。備中松山城を取り戻した元親は、城を大規模に改修し要塞化しました。

戦乱の勃発と三村氏の滅亡

1574年、毛利氏は宇喜多直家と同盟を結びます。この決定は、毛利家内部で意見が分かれました。吉川元春は宇喜多氏を信用できないとして反対し、三村氏との関係を重視するべきだと主張しました。しかし、小早川隆景は宇喜多氏との同盟を推し進めました。毛利氏の姿勢に不満を持った元親は、織田信長と内通し、毛利氏から離反します。これに対し、毛利氏は小早川隆景を総大将として8万の大軍を派遣、備中兵乱が勃発します。

毛利軍はまず、備中松山城周辺の城を次々に陥落させ、備中松山城を包囲します。城は堅牢で、力攻めはせず、持久戦に持ち込みました。包囲が長引くにつれて、三村軍の士気は低下し、内応者が続出。1575年5月、ついに備中松山城は陥落しました。元親は家臣の進言で一時逃亡を図るも、覚悟を決め、小早川隆景に切腹を願い出ます。隆景はこれを認め、元親は辞世の句を残し自刃しました。

備中松山城落城後も、毛利氏は三村氏の残党掃討作戦を続けました。三村一族の最後の城であった常山城も落城し、備中兵乱は終結しました。この戦いによって、戦国大名としての三村氏は滅亡しました。なお、元親の叔父・親成は所領を安堵され、引き続き成羽鶴首城主の地位を許されました。親成は、三村本家の縁者を庇護し、その子孫は、江戸時代には福山藩の家老を務めました。

備中兵乱の結果、備中の大半は毛利氏の領土となり、南部の一部は宇喜多氏に与えられました。この戦いは、中国地方の勢力図を大きく塗り替える出来事となりました。

この戦いの教訓として、

有力な大名同士の駆け引きの重要性
内部分裂の危険性
情報収集の重要性

などがあげられます。また、この戦いは、戦国時代という激動の時代における地方大名の興亡を象徴する出来事としても、後世に語り継がれています。

参考文献

加原耕作『新釈 備中兵乱記』山陽新聞社、1987年。

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