備前渠用水

備前渠用水について

備前渠用水（びぜんきょようすい）は、埼玉県北部を流れる、埼玉県最古の農業用水路です。利根川水系の一級河川であり、疏水百選やかんがい施設遺産にも選定されています。この水路は、現在も農業用水として重要な役割を果たしており、地域の人々にとって欠かせない存在となっています。

概要

備前渠用水は、本庄市山王堂地区で利根川から取水し、深谷市、熊谷市を流れ、福川に合流して再び利根川へと流れます。途中、御陣馬川や小山川と流路を共有する区間もあります。埼玉県北部では、親しみを込めて「備前堀」や「備前渠」、「備前渠川」とも呼ばれています。

水路の特徴として、開削当時の面影を残す素掘りの区間が多く残っています。総延長は約23キロメートル、最大通水量は毎秒約9立方メートルで、利根川右岸一帯の約1400ヘクタールの水田へ用水を供給しています。

歴史

備前渠用水の歴史は、江戸時代初期にまで遡ります。

1604年（慶長9年）: 江戸幕府の命令により、関東代官頭伊奈備前守忠次によって計画され、20数キロメートルにわたり水路が開削されました。この時、水路は「備前堀」と名付けられました。当時は正確な地図がない中、伊奈忠次は、水路を開削する場所を何度も歩いて調査し、夜には提灯を使って土地の高さを測り、水が流れることを確認しました。工事には、鋤や鍬などの道具が使われ、土を運搬するために、かるこやもっこが活用されました。
その後: 洪水により烏川の流路が変わり、元圦（取水口）が壊滅しました。
1783年（天明3年）: 浅間山の天明大噴火により水路が埋没し、岩石や流木などで川底は平均2メートルも上昇しました。これにより、現在の本庄市周辺では度々洪水が発生するようになりました。
1793年（寛政5年）: 烏川の河道の上昇に伴い、元圦が締め切られ、下流に水が来なくなったため、水争いや裁判が起こりました。
1818年（文政元年）: 用水不足が深刻化し、毎年のように米が不作となりました。
1828年（文政11年）: ようやく取水口の復旧工事が開始され、43日間で通水に至りました。しかし、取水口は利根川や烏川の乱流域に位置するため、その後も二度の変更工事が行われました。
1930年（昭和5年）: 1921年（大正10年）の大水害により、元圦（取水口）の改修が行われました。
1939年（昭和14年）: 堤外地（河川敷）にある流砂池や土砂吐水路などの改修が行われ、1946年（昭和21年）に完工しました。
1958年（昭和33年）: 県の排水改良事業が着工され、取水口や導水路（暗渠・開渠工）などの抜本的な改良が開始されました。
1961年（昭和36年）: 現在の取水口が完成しました。現在、用水路と施設の管理は備前渠用水路土地改良区が行っています。
1965年（昭和40年）: 県の排水改良事業が完工しました。
2020年（令和2年）: 世界かんがい施設遺産に登録されました。

名称の由来

備前渠用水の名前は、計画者である伊奈備前守忠次に由来します。「渠」は、堀や人工河川などの中国風の呼び方です。

橋梁

備前渠用水には、数多くの橋が架かっています。以下は、上流から主な橋梁の一覧です。

（これより上流は暗渠）
本庄市山王堂で御陣馬川に合流
（国道462号）
本庄市久々宇で御陣馬川より分流
備前堀橋
北原橋
名称不明
あずま橋
北原橋
小和瀬中橋
稲荷橋（埼玉県道・群馬県道258号中瀬牧西線）
宮戸橋
滝瀬橋（埼玉県道45号本庄妻沼線）
仲橋
喜七八橋（埼玉県道259号新野岡部停車場線）
柳原橋
深谷市岡で小山川に合流
高橋（埼玉県道355号中瀬普済寺線）
深谷市矢島で小山川より分流
瑞穂橋
上橋
小俣橋（埼玉県道14号伊勢崎深谷線）
上大橋
宮橋
中橋
名称不明
上敷免橋
備前渠鉄橋（あかね通り） - 国の重要文化財に指定（重要文化財「日本煉瓦製造株式会社旧煉瓦製造施設」の一部）
新井橋（埼玉県道356号成塚中瀬線）
諏訪西橋
新沼橋
栄橋
蓮沼橋（上武道路）
新江原橋
江原橋
堀米橋
上橋
中橋（埼玉県道276号新堀尾島線）
下橋
備前橋（埼玉県道127号深谷飯塚線）
福王寺橋
芝橋
福寿院橋（国道407号）
名称不明
中橋
道祖神橋
千歳橋（埼玉県道341号太田熊谷線）
王子橋（埼玉県道303号弥藤吾行田線）
備前橋（市道） - 旧東武熊谷線

まとめ

備前渠用水は、江戸時代から現代まで、地域の農業を支え続けてきた重要な水路です。その歴史的価値は高く、疏水百選や世界かんがい施設遺産に選ばれていることからも明らかです。今後も、地域の人々によって大切に守り続けられていくことでしょう。

関連項目

日本の[[用水路一覧]]

外部リンク

備前渠用水 (PDF) - 埼玉県ホームページ
備前渠用水路（びぜんきょようすいろ） - 熊谷市ホームページ
* 備前渠用水 - ウェイバックマシン（2019年1月1日アーカイブ分） - 有限会社フカダソフト（きまぐれ旅写真館）

もう一度検索