優雅なインドの国々

概要

『優雅なインドの国々』（Les Indes galantes）は、ジャン＝フィリップ・ラモーが作曲したプロローグと4幕からなるオペラ＝バレです。1735年にパリで初演され、当時流行していた異国趣味を取り入れた壮大な舞台と、ラモーの美しい音楽で観客を魅了しました。この作品は、オペラ＝バレというジャンルの頂点を極めた作品の一つとされています。

オペラ＝バレとは、音楽、歌唱、ダンス、舞台美術などが一体となった総合芸術であり、本作はまさにその典型例です。プロのダンサーが宮廷のアマチュアに取って代わる時代に、アンドレ・カンプラの『優雅なヨーロッパ』に続き、オペラ＝バレの代表作として位置づけられています。

初演は大成功を収めましたが、1771年にレパートリーから外れました。しかし、20世紀半ばに復元版が上演され、再び人気を博しました。アメリカや日本でも上演され、その魅力は現代にも受け継がれています。

作品と音楽

『優雅なインドの国々』は、ラモーの作品の中でも特に有名で、彼の舞台作品の代表作の一つです。各幕はそれぞれ異なる個性を持っており、音楽、歌、舞踊ともに素晴らしい内容です。

第1幕「寛大なるトルコ人」：嵐の場面や水兵の合唱など、ドラマティックな音楽が特徴的です。
第2幕「ペルーのインカ人」：太陽讃歌「この世の輝く炎」や、地震の場面など、雄大な音楽が印象的です。登場人物の類型化も巧みです。
第3幕「花々」：親密な雰囲気を持ち、四重唱が特徴的です。
第4幕「未開人たち」：荘重な雰囲気で、シャコンヌがクライマックスを飾ります。この幕の舞曲は、ラモーのクラヴサン曲『未開人たち』からの編曲も含まれています。

澤田肇は、本作を「詩と音楽とダンスが非常に生き生きとしたものになっている」と評しています。また、指揮者のウィリアム・クリスティは、ラモーを「ストラヴィンスキー以前の最大のバレエ音楽の作曲家」と称賛しています。

グラウトは、ラモーの音楽を「舞踏（耳に聞こえる身振り）」と表現し、その音楽が踊り手の動きを生き生きと連想させる力を持っていると述べています。

リブレット

リブレットは、当時流行していた異国趣味を取り入れたオムニバス形式の物語で、ヨーロッパ以外の架空の国々を舞台としています。各幕はそれぞれ異なる文化や風俗を描き出し、視覚的にも物語的にも楽しめます。

フュズリエのリブレットは、当時批判も受けましたが、良い点も多く、各幕に明確な特徴があり、物語の展開も魅力的です。彼は、ヨーロッパと他の文化との対比を試み、必ずしもヨーロッパが優位に立っているわけではないことを示唆しました。

岸純信は、各幕が異なる様式を持っていると指摘しています。第1幕は救出劇、第2幕は悲劇、第3幕は田園牧歌劇、そして第4幕はコメディの要素を持っています。

演奏時間

プロローグは約30分、各幕は約35分から45分で、合計約3時間10分の演奏時間です。

あらすじ

プロローグ：愛の女神エベが若者たちを誘い踊り出すが、戦いの女神ベローヌが現れて戦いを煽動する。最終的に愛が勝利する。
第1幕「寛大なるトルコ人」：トルコに捕らえられたキリスト教徒のエミリーは、求愛してくるオスマンを拒否する。その後、奴隷となった夫と再会するが、オスマンの寛大な心によって解放される。
第2幕「ペルーのインカ人」：インカの王族の血を引くファニは、スペイン人士官カルロスと恋に落ちる。神官ユアスカルもファニを愛するが、最後は火山の噴火に巻き込まれ、カルロスに救われる。
第3幕「花々」：ペルシャの王子タクマは、愛妾に飽きて女奴隷に恋をする。タクマは女装して彼女に近づこうとするが、恋のすれ違いが起こる。最終的に、2組のカップルが結ばれる。
* 第4幕「未開人たち」：アメリカのインディアンの勇士アダリオは、恋人のジマがフランス人とスペイン人に目をつけられていることを心配する。しかし、ジマはアダリオを愛しており、平和が回復される。

関連作品

アンドレ・カンプラのオペラ『優雅なヨーロッパ』も、オペラ＝バレの代表作として知られています。

まとめ

『優雅なインドの国々』は、ラモーの音楽的才能と、当時の舞台芸術の粋を集めた壮大な作品です。異国情緒あふれる舞台設定、魅力的な登場人物、そして美しい音楽とダンスが、観客を魅了します。バロックオペラに興味がある方はもちろん、総合芸術としてのオペラを楽しみたい方にもおすすめです。

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