元伊勢

元伊勢の伝承と歴史

元伊勢（もといせ）は、三重県伊勢市に位置しており、かつて伊勢神宮（皇大神宮および豊受大神宮）が現在の地へ移る前に一時的に祀られた場所として知られています。この地には神々の歴史が色濃く残り、貴重な伝承が数多く存在しています。

伊勢神宮の祭神

伊勢神宮の内宮に祀られている祭神は天照大御神であり、彼女は皇祖神とされています。伝承によれば、天照大御神は第10代崇神天皇の時代には皇居内に祭られていたとされるが、これが畏れられたことをきっかけに、天皇は天照大御神の神霊を皇女・豊鋤入姫命に託し、「磯堅城の神籬」を磯城に設けました。この出来事が元伊勢の形成に繋がっていくのです。

また、天照大御神の霊を尊ぶための理想的な鎮座地を求めて各地を移動し続けた結果、その子孫となる倭姫命が約90年かけて現在の伊勢に遷座しました。この一連の遷座の経緯は、『古事記』には詳細な記載はありませんが、『日本書紀』や『皇太神宮儀式帳』、さらに中世の『倭姫命世記』では詳しく述べられています。

豊受大神宮とその神託

伊勢神宮の外宮には豊受大御神が祀られています。彼女に関する古文書には、具体的な記録が見つからないものの、『止由気宮儀式帳』や『倭姫命世記』によると、第21代雄略天皇の在位中に天照大御神の神託を受けて、丹波国から遷座したと伝わっています。このように、豊受大御神の移り変わりもまた、元伊勢の形成に重要な役割を果たしています。

旅する神々の物語

天照大御神が各地を旅し、祭りや神社が誕生した背景には、様々な民間伝承があります。筑波山にまつわる話や弘法大師に関する伝説は、神々が理想の地を求めて旅をする姿を描いています。このような神々が旅をする物語は一般的で、その典型例として元伊勢の伝承が位置付けられています。

元伊勢の伝承地

元伊勢に関する伝承は多岐にわたりますが、『皇太神宮儀式帳』や『止由氣宮儀式帳』、さらには『古語拾遺』や『延喜式』などからその根を探ることができます。しかし、詳細な伝承地は確定的ではなく、かつては二十数箇所が候補とされていたものの、現在では60箇所以上に増えているのです。これらの箇所は各地の神社に伝わる伝説が基になっており、近隣の神社で伝承地を主張するところもあるため、真偽については依然として不明な点が多いです。

まとめ

元伊勢は伊勢神宮の遷移に深く関与した神社でもあり、その伝承や神々の旅は数多くの興味深い物語を持っています。その歴史を紐解くことで、日本の神々や文化への理解を深めることができるでしょう。元伊勢にまつわるさまざまな遺跡や神社を訪れることは、神道を学ぶ上での貴重な経験となることでしょう。

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