元廞

元廞（げん きん、486年 - 528年）は、北魏の皇族であり、字を義興と称しました。彼は元英の庶子として生まれ、叔父である元並洛の跡を継ぎました。

孝明帝の治世初期、元廞は員外散騎侍郎の官位を授かりました。その後、騎兵参軍として軍務に携わり、襄威将軍の号を加えられました。軍功を重ねることで、彼は員外散騎常侍へと昇進し、十州都将という要職を任されました。元熙が殺害された際には、元廞は事件との関係を断っていたため、連座を免れることができました。その後、輔国将軍・通直散騎常侍の位を受けました。

528年4月、北魏を揺るがす大事件である河陰の変が勃発し、元廞もこの動乱の中で命を落としました。享年43歳でした。彼の死後、中軍将軍・瀛州刺史の位が追贈され、同年7月には竟陵の東に埋葬されました。さらに後には、散騎常侍・征東将軍の位も贈られています。

永安年間に入ると、元廞は燕郡王に追封されました。その後まもなくして鉅鹿王に改封され、最終的には武邑王に改封されました。

元廞の妻は趙郡李氏であり、爾朱栄の妻と親密な関係にあったと伝えられています。彼には元述という息子がおり、元廞の跡を継ぎました。東魏の天平年間には通直郎を務めましたが、北斉が建国されると爵位を降格されました。

元廞の生涯は、『魏書』巻19下 列伝第7下、『北史』巻18 列伝第6、そして「魏故使持節中軍将軍征東大将軍散騎常侍瀛州刺史元君墓誌銘」（元廞墓誌）といった史料に記録されています。これらの史料は、彼の出自、官歴、家族関係、そして彼が遭遇した歴史的事件について知る上で貴重な情報源となっています。

元廞は、北魏という激動の時代を生きた皇族の一人であり、その生涯は、当時の政治情勢や社会状況を反映しています。彼の足跡を辿ることは、北魏史を理解する上で重要な意味を持つと言えるでしょう。特に河陰の変という悲劇的な事件との関わりは、彼の人生を大きく左右しました。また、死後に追贈された数々の官位や爵位は、彼に対する評価の変化や政治的な意味合いを示唆しています。

彼の妻である趙郡李氏が爾朱栄の妻と親しかったという事実は、当時の貴族社会における人間関係の複雑さを物語っています。また、息子の元述が辿った運命も、北魏から東魏、そして北斉へと時代が移り変わる中で、人々の立場や運命が大きく変動したことを示しています。

元廞の墓誌銘は、彼の生涯を簡潔にまとめたものであり、当時の葬送儀礼や価値観を知る上で貴重な資料です。これらの史料を総合的に検討することで、元廞という人物像をより深く理解することができます。

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