河陰の変

河陰の変：北魏を揺るがした政変

河陰の変は、528年に北魏で起こった大規模な政変です。この事件は、爾朱栄という人物が、当時の権力者であった胡太后とその傀儡である幼い皇帝、元釗を黄河に沈め、さらに多くの北魏の王侯や高官を虐殺したことで知られています。この事件は、爾朱栄の乱とも呼ばれ、北魏の政治に大きな影響を与えました。

事件の背景

事件の背景には、北魏の朝廷内における権力闘争がありました。孝明帝の時代、実権を握っていたのは母后である胡太后でした。しかし、孝明帝が成長するにつれて、胡太后の専横的な政治に不満を持つようになります。そこで孝明帝は、晋陽にいた爾朱栄を呼び寄せ、胡太后を牽制しようとしました。爾朱栄はこれに応じて軍を率い、高歓を先鋒として上党に進軍しました。

しかし、胡太后は孝明帝の動きを察知し、先手を打って孝明帝を毒殺してしまいます。そして、潘充華が生んだ皇女を皇子と偽って皇帝に即位させました。しかし、この偽装はすぐに発覚し、皇女はわずか1日で退位させられ、代わりに臨洮王元宝暉の子である3歳の元釗が皇帝に擁立されました。

事件の発生

爾朱栄は、この一連の出来事に激怒し、元天穆と協議して、武力による政権奪取を決意します。528年3月、爾朱栄は河内に入り、使者を洛陽に派遣して長楽王元子攸を迎え入れました。そして4月、爾朱栄と元子攸は河陽で合流し、元子攸は孝荘帝として即位しました。爾朱栄は、孝荘帝から使持節・侍中・都督中外諸軍事・大将軍・開府・尚書令・領左右・領軍将軍に任じられ、太原王に封じられました。

河橋を守っていた鄭先護と鄭季明は、もともと孝荘帝と親交があり、彼の即位の知らせを聞いて開城しました。これにより、胡太后は自らの敗北を悟り、髪を落として出家しました。洛陽の朝廷の官僚たちは、璽綬を携えて孝荘帝を迎え入れるために河橋へと向かいました。爾朱栄は騎兵を派遣して胡太后と元釗を捕らえさせ、河陰に連行した後、二人を黄河に沈めて殺害しました。

大粛清

爾朱栄は、費穆の提案を受け入れ、朝廷内の粛清に乗り出しました。慕容紹宗が諫めましたが、爾朱栄は聞き入れませんでした。この粛清によって、丞相の高陽王元雍や司空の元欽、儀同三司の東平王元略らをはじめとする2000人以上もの人々が犠牲となりました。

事件の影響

河陰の変によって、爾朱栄は孝荘帝を傀儡として北魏の実権を掌握しました。しかし、この事件は北魏の政治を大きく混乱させ、その後の北魏の衰退を招く一因となりました。また、爾朱栄の専横的な振る舞いは、各地で反乱を引き起こし、北魏は内乱状態に陥りました。

河陰の変は、北魏の歴史における重要な転換点であり、その後の北魏の政治、社会に大きな影響を与えた事件として知られています。

参考文献

『資治通鑑』（中華書局、1956年）巻152 梁紀8
『魏書』（中華書局、1974年）
* 『北史』（中華書局、1974年）

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