爾朱栄

爾朱栄（じしゅ えい）

爾朱栄（493年 - 530年）は、北魏末期の軍人であり、秀容第一領民首長を務めた人物です。字は天宝。彼は、北魏の混乱期において、その軍事力と政治的手腕によって大きな影響力を行使しました。

生涯

爾朱栄は、北魏の散騎常侍・平北将軍であった爾朱新興の子として生まれました。父の隠退後、秀容第一領民酋長の地位を継承し、直寝・游撃将軍に任じられます。523年には、柔然の侵攻に対抗するため、冠軍将軍として李崇の下で北伐に参加しました。その後、国内での反乱鎮圧に奔走し、その功績によって安平県開国侯に封ぜられ、通直散騎常侍の位を加えられました。また、勅勒の乱を鎮圧し、平北将軍・光禄大夫に昇進、さらに武衛将軍、安北将軍・都督恒朔討虜諸軍事を歴任し、博陵郡公に進みました。

肆州刺史の尉慶賓が爾朱栄を嫌い入城を拒んだ際には、怒って肆州を攻め落とし、従叔父の爾朱羽生を刺史に据えるという事件を起こします。しかし、北魏朝廷は爾朱栄を罰することができず、鎮北将軍に任じました。526年には、鮮于修礼の乱を鎮圧し、征東将軍・右衛将軍に進み、大都督となります。527年、葛栄が杜洛周を併呑し、鄴城に迫ると、爾朱栄は朝廷に援軍を求めますが、孝明帝に拒否されたため、自ら義勇兵を募り、各地を転戦しました。

爾朱栄の長女は大爾朱氏は孝明帝の後宮に入り嬪となりました。528年、爾朱栄は、霊太后の専横を除くよう孝明帝の密詔を受けますが、その陰謀が露見し、孝明帝は霊太后によって毒殺されます。これに対し、爾朱栄は君側の奸を除くと称して挙兵し、洛陽を攻撃。霊太后と幼主の元釗を黄河に投棄し殺害。さらに、皇族や朝臣など2000人以上を虐殺するという「河陰の変」を引き起こしました。

その後、爾朱栄は長楽王の元子攸（孝荘帝）を皇帝に擁立し、自らの娘を娶らせて外戚としての地位を確立します。使持節・侍中・都督中外諸軍事・大将軍・開府・尚書令・領左右・領軍将軍に就任し、太原王に封ぜられました。長男の爾朱菩提を太原王世子に、次男の爾朱叉羅を梁郡王に立て、権勢を誇りました。武衛将軍の費穆の進言を受け、帝位簒奪の機会を窺っていましたが、それは実現しませんでした。

529年には葛栄を滅ぼし、六鎮の乱を平定するなど、軍事的な手腕を発揮しましたが、天子の岳父としての専横が目立つようになります。孝荘帝は、爾朱栄の専横を憎み、また、妻である爾朱皇后が夫を軽んじたことから、ついに530年、爾朱栄暗殺を計画します。

爾朱栄は、皇子の誕生の予定を聞き、皇后の見舞いのため、上党王の元天穆や息子の爾朱菩提らを伴って宮殿に参内した際、孝荘帝によって誅殺されました。

しかし、孝荘帝も、間もなく爾朱栄の一族である爾朱兆らによって廃位され、晋陽に連行されて殺害されます。その後、爾朱氏一門は高歓によって滅ぼされ、長女（爾朱皇后）が高歓の側室となると、2人の幼い子供は保護されました。

爾朱栄の生涯は、北魏末期の政治的混乱と権力闘争を象徴する出来事として、歴史に刻まれています。

家族

妻: 北郷郡長公主（南安王拓跋楨の娘。爾朱栄のため、長公主に進封）
男子:
爾朱菩提
爾朱叉羅
爾朱文殊
爾朱文暢
爾朱文略
女子:
大爾朱氏
爾朱氏（陳留王元寛の妻）
* 爾朱氏（于長孺の妻）

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