元英

元英（げん えい）

元英（? - 510年）は、北魏の皇族であり、中山献武王の称号を持ちます。字は虎児といいました。

生涯

南安王拓跋楨の子として生まれた元英は、幼い頃から聡明で、記憶力に優れていました。弓術や乗馬を得意とし、音楽や医術にも深い理解を示すなど、多才な人物でした。孝文帝の時代には、平北将軍・武川鎮都大将に任じられ、その後、都督梁益寧三州諸軍事・安南将軍・領護西戎校尉・仇池鎮都大将・梁州刺史と、重要な役職を歴任しました。

494年、孝文帝が南征を開始すると、元英は梁漢別道都将として従軍しました。495年には、孝文帝が自ら鍾離に迫る中、元英は軍を率いて西南国境の警備を担当しました。彼は、孝文帝の本軍が南東で戦端を開くのに合わせ、漢中でも攻勢に出ることを提案し、許可を得ました。沮水に陣を構えた元英軍に対し、南朝斉の将軍蕭懿は、尹紹祖・梁季群らを派遣し、2万の兵で山間の地形を利用した防御陣地を築かせました。しかし、元英は斉軍の連携の弱点を見抜き、一点集中攻撃を敢行。各個撃破し、梁季群を生け捕り、多数の敵兵を討ち取るという大戦果を挙げました。この勝利に乗じて南鄭に迫り、漢水流域の多くの人々が北魏に帰順しました。

その後も、南朝斉との間で激しい攻防が繰り広げられました。蕭懿は次々と援軍を派遣しましたが、元英の巧みな用兵の前に翻弄され、南鄭は包囲されるに至りました。元英は略奪を禁じ、兵站を確保することで、包囲を維持しました。90日以上に及ぶ包囲戦の末、孝文帝の勅命により、南鄭を陥落させることなく軍を撤退させることとなりました。撤退戦においても、元英は老弱兵を先に退却させ、自身は精鋭部隊を率いて殿軍を務め、追撃を試みる斉軍を撃退しました。この功績により、安南大将軍の号と広武伯の爵位を授けられました。

497年、孝文帝が漢陽を攻撃すると、元英は左衛将軍となり、前将軍の号を加えられました。その後、大宗正、尚書を歴任し、前将軍のまま荊州に駐屯しました。499年、南朝斉の将軍陳顕達らが荊州に侵攻してくると、元英は連戦して敗れ、官爵を剥奪されました。しかし、宣武帝の即位後、徐州刺史を代行として復帰し、尚書・広武伯にもどされました。500年には、鎮南将軍として、南朝斉の将軍陳伯之を討伐しました。

503年、元英は義陽攻略を命じられ、南朝梁の司州刺史蔡道恭が守る義陽城を包囲しました。彼は、巧みな戦術で敵を翻弄し、着実に戦果を重ねていきました。504年には、曹景宗率いる南朝梁の援軍を撃破し、義陽を陥落させることに成功しました。この功績により、中山王に改封されました。しかし、506年、南朝梁が肥梁に侵攻してくると、元英は迎撃に出ましたが、鍾離の戦いで大敗を喫し、敗戦の責任を問われ、一時は庶民に落とされました。

508年、京兆王元愉が反乱を起こすと、元英は中山王に復帰し、征東将軍として鎮圧に向かいましたが、出陣前に反乱は鎮圧されました。その後、南朝梁が再び侵攻してくると、征南将軍として迎撃し、懸瓠を攻略するなどの戦果を挙げました。509年には、三関を奪還するなどの功績を挙げました。

510年、元英は尚書僕射に任じられましたが、その年の10月に亡くなりました。死後、司徒公の位を追贈され、献武王と諡されました。

子女

元攸（字は玄興、東宮洗馬、早逝）
元熙
元誘（字は恵興、通直郎・太子中庶子・征虜将軍・衛尉少卿、右将軍・南秦州刺史）
元略
元纂（字は紹興、司徒祭酒、元熙が挙兵すると、鄴に逃れて捕らえられ、元熙とともに死んだ）
元廞

伝記資料

『魏書』巻19下 列伝第7下
『北史』巻18 列伝第6

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