元江府

元江府（げんこうふ）は、中国の歴史において、現在の雲南省南部に存在した行政区画です。元代に府として設置されてから、明代、清代を経て、中華民国初期に廃止されるまで、その名称や管轄範囲を変化させながら歴史を刻みました。

元代の元江府

元江府の歴史は、1276年（至元13年）に元朝によって設置されたことに始まります。当初は府として統治されていましたが、1288年（至元25年）には元江路と改称されました。この元江路は、雲南等処行中書省に属し、羅槃（らばん）、馬籠（まろう）、歩日（ほにち）、思麼（しぼ）、羅丑（らしゅう）、羅陀（らだ）、歩騰（ほとう）、歩竭（ほかつ）、台威（たいい）、台陽（たいよう）、設栖（せっせい）、你陀（にだ）という12の部を管轄しました。これらの部族は、当時の雲南地方に居住していた少数民族であったと考えられます。

明代の元江府

1382年（洪武15年）、明朝は元江路を再び元江府と改めました。さらに1405年（永楽3年）には、元江軍民府へと名称が変更されました。この元江軍民府は雲南省に属し、奉化州と恭順州という2つの州を管轄しました。この時期の元江府は、那氏という土司（地方の有力者）が知府として世襲する体制となっていました。土司は、地方の行政や軍事を担当し、地域社会において重要な役割を果たしていました。

清代の元江府

1649年（順治6年）、清朝は改土帰流政策を実施し、元江軍民府を流官（中央から派遣された官僚）が統治する元江府へと改めました。これにより、土司による世襲制は廃止され、中央政府による直接的な支配が強化されました。しかし、1770年（乾隆35年）には、元江府は元江直隷州へと降格され、雲南省に属し、新平県1県を管轄するようになりました。直隷州は、府よりも下位の行政区画であり、この降格は元江府の地位が低下したことを示しています。

中華民国時代の終焉

1913年、中華民国が成立すると、元江直隷州は廃止されました。これにより、元代から続いた元江府の歴史は終わりを迎えました。

元江府は、時代とともにその名称や管轄範囲を変えながら、雲南省南部の歴史を彩りました。元代から清代にかけて、土司による統治や中央政府による直接支配、また行政区画の昇格・降格など、様々な変化を経験しました。この地域の歴史を語る上で、元江府の存在は欠かすことのできない重要な要素です。この地域は、多様な文化が交錯する場所であり、その歴史は、中国の多民族国家としての側面をよく表しています。

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