元禄の大古酒

元禄の大古酒

元禄の大古酒は、長野県佐久市茂田井に位置する大澤酒造が、江戸時代の元禄2年（1689年）に創造した日本酒です。この特異な日本酒は、現代に至るまで封印されており、1960年代後半に開封されました。この開封は、日本最古の日本酒の一つとして注目され、多くのメディアに取り上げられました。

開封の背景と容器

大古酒は、坂口謹一郎の立会いのもと、NHKの朝の情報番組『スタジオ102』でその模様が放送されました。お酒は白磁で作られた壺に収められており、ひさごの形をした容器の口は漆塗りの木栓で封じ込められ、その上には漆がかけられていました。この壺は木製の箱に入れられ、開封が禁忌とされる伝説に包まれていました。開封の際、壺の表面にはひび割れが見られ、その隙間からは液体がにじみ出て、黒褐色の糊状物が固まっているのが確認されました。

お酒の成分

開封された中身は、液体に固形物が混ざり、帯褐灰色の色合いを呈していました。顕微鏡を用いた分析では、酵母の残骸が観察され、もろみが保存されていた可能性が指摘されました。坂口謹一郎はその香りを、スペインで出会った100年物のシェリーに喩え、非常に感銘を受けたと述べています。試飲を行った本郷信郎は、この大古酒の香りに細やかさを感じ、味わいは軽やかであり、のど越しには清涼感があったと報告しています。

分析結果

大古酒は酒類総合研究所に送られ、詳細な分析が行われました。結果として、「元禄の酒（三百年古酒）の分析表」が作成され、ここには比重が1.025（15℃/4℃）、アルコール度数が26.45ml/100g、直糖（6.02g/100g）、総酸度（6.76/10g）、アミノ酸度（2.46/10g）といった詳細な数値が記載されました。特筆すべきは、容器の材質による影響で、アルコール度数が高くなっていることです。

大澤酒造と大古酒展示

大澤酒造は1981年に酒母室を改装し、「大澤酒造民俗資料館」を開設しました。この館では、大古酒の容器が「秘蔵元禄の壷」として展示されており、訪れる人々はその歴史を直接感じることができます。大古酒の存在は、日本酒の文化と歴史における重要な一面を物語っています。

その他の大古酒

元禄の大古酒以外にも、長野県で醸造された寛文4年（1664年）の大古酒や、新潟県岩船郡関川村で保存された宝暦6年（1756年）の大古酒などがあります。これらの大古酒にも、それぞれの歴史と特異性が詰まっています。

元禄の大古酒は、日本の酒文化における貴重な一品であり、その物語は今も多くの人々の興味を惹きつけています。

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