充て職

充て職（あてしょく）とは

充て職とは、ある特定の職にある者を、別の特定の職に就かせる（充てる）人事のことです。主に公的機関や非営利団体などで見られ、特に公務員の人事において、ある官職にある者が、関係する別の官職を兼務する場合を指すことが多いです。

充て職の種類

充て職には、大きく分けて二つの種類があります。

1. 法令等に基づく充て職: 法令、例規、規則、定款などの規定に基づいて行われるもの。
2. 慣例に基づく充て職: ある一定の社会的な地位にある職に就いている者を、慣例的に選任するもの。

公的機関においては、本来的な意味での充て職は前者ですが、後者を充て職と呼ぶ例も少なくありません。

法令等に基づく充て職の例

根拠規定において、「（Aの職）は（Bの職）をもって充てる」と定められます。具体的な例としては、以下のようなものがあります。

大臣委員会の委員長に国務大臣が任命される例
最高裁判所事務総局の官職に裁判官が任命される（充て判事）
法務省の内部部局の官職に検事が任命される（充て検事）
防衛省（自衛隊）の官職に自衛官が任命される
教育委員会の行政職である指導主事に教諭や教頭・校長が任命される
教務主任などの学校に置かれる職に教諭が任命される

これらの事例では、充て職とすることで、待遇の変動や給与の減額を抑えながら、職務に必要な知識・経験を備えた人材を登用しやすくなるというメリットがあります。

慣例に基づく充て職の例

地方公共団体の三役が当該自治体の関係機関・関係団体の長を兼ねる、商工会議所会頭が各種経済・産業振興団体の長に就く、といった例が挙げられます。

地方公共団体の長の充て職

地方公共団体の長（首長）は、多くの充て職を抱えているのが一般的です。これらの充て職への就任は、首長の自発的な意志に基づかず、自動的に行われることが多いです。

充て職の問題点

首長の充て職は名誉職に近いものもありますが、本来の職務以外の行事のために時間を割かれたり、法的・外見的に当該組織の代表者であるために、自発的に就任した職ではないにもかかわらず、充て職先の不祥事により思わぬ損害賠償の責任を負うといった問題点も指摘されています。

首長の交代と充て職

首長の充て職は、その性格から言って、本来、首長の交代と同時に交代されるべきものです。しかし、2006年には、前長野県知事が知事の任期満了後も、慣例的に知事が就任していた県の外郭団体の長などの「あて職」を辞任せず、その職に居座るという事例が発生しました。このような混乱を避けるため、規則等に基づいて首長を長に充てている団体の中には、規則に「あて職は（首長の）在任期間を任期とする」などの但し書きを設けているケースもあります。

関連法規

地方自治法には、一定の職にある職員が他の一定の職を当然に占めるものとする制度が定められています（狭義の充て職）。

地方自治法における規定

第百八十条の三

普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体の委員会又は委員と協議して、その補助機関である職員を、当該執行機関の事務を補助する職員若しくはこれらの執行機関の管理に属する機関の職員と兼ねさせ、若しくは当該執行機関の事務を補助する職員若しくはこれらの執行機関の管理に属する機関の職員に充て、又は当該執行機関の事務に従事させることができる。

もう一度検索