光明寺 (南砺市)

光明寺（こうみょうじ）

富山県南砺市（旧平村）の田向地区に静かに佇む光明寺は、真宗大谷派に属する歴史ある寺院です。

五箇山における真宗の歩みと光明寺の起源

五箇山地域へ浄土真宗の教えが広まったのは、15世紀後半頃のこととされています。この時期、越前国（現在の福井県）の和田本覚寺が布教の中心的な役割を担いました。和田本覚寺をはじめとする「北国一家衆」は、本願寺第5代綽如の庶流の子孫にあたり、北陸一帯に教線を拡大していました。五箇山の中でも、中央部に位置する下梨より西の地域は、彼らの勢力下に入ります。

これにやや遅れて、五箇山の東部地域への進出を果たしたのが、加賀国吉藤（現在の石川県金沢市専光寺町）の専光寺でした。光明寺の前身である田向道場は、この吉藤専光寺の傘下に置かれる形でその歴史をスタートさせました。

伝えられる由緒と歴史的痕跡

光明寺の起源については、複数の伝承が語り継がれています。一つは、本願寺第5代綽如の弟子であった玄正を開基とする説。もう一つは、福井県吉田郡からの移転によって始まったとする説です。当寺には、親鸞聖人の肖像画が所蔵されており、その裏書には慶長11年（1606年）の年紀とともに越前の地名を示唆する記述が見られます。この裏書が、福井からの移転説の根拠の一つとされています。

また、五箇山における歴史的な記録の中にも、田向道場に関する記述が見出されます。天文21年（1552年）10月27日付で作成された「五箇山十日講起請文」には、「田向掃部」という人物の署名があります。この人物について、瑞願寺が記した注釈によれば、田向道場の道場主を務めた人物の先祖にあたると伝えられています。

所属の変化と寺号の公称

田向道場は、当初は吉藤専光寺に属する道場でした。しかし、江戸時代中期の寛政年間（1789年-1801年）に編纂された史料「五ケ山之道場しらべ」には、「砺波郡坂上村西勝寺 田向村 庄次郎」という記述があり、この頃には砺波郡坂上村（現在の南砺市坂上）にある西勝寺の末寺となっていたことが伺えます。一時的に所属が変更されていた時期があったようです。

その後、再び専光寺下道場に戻ったと考えられていますが、その詳細な経緯は明らかではありません。明治維新を経て、近代的な寺院制度が確立されていく中で、田向道場は独立した寺院としての歩みを進めます。そして、明治13年（1880年）3月9日付で「光明寺」という寺号の使用が正式に許可され、今日に至っています。

本堂の歴史

田向村は、天明5年（1785年）に発生した大火により大きな被害を受けました。この火災で、当時の田向道場の建物も焼失したとみられています。その後、本堂は再建され、現在もその建物が用いられています。

昭和48年（1973年）に本堂の改修工事が行われた際、建物の中から「安永四年十月晦日出来」（1775年）という墨書が発見されました。これは、現在の本堂が完成した時期を示す可能性のある貴重な発見でした。天明の大火よりも前の年紀であることから、当時の建材の一部が再利用された可能性なども考えられますが、詳細は定かではありません。しかし、この墨書は、光明寺の本堂が持つ長い歴史を物語る一つの証となっています。

このように、光明寺は五箇山地域における真宗の歴史を背景に、様々な変遷を経て現在に至る寺院です。その由緒や歴史を紐解くことは、この地域の信仰の深さを知る上で興味深い手がかりとなります。

もう一度検索