綽如

綽如（しゃくにょ） - 浄土真宗の僧侶とその波乱に満ちた生涯

綽如は、南北朝時代を駆け抜けた浄土真宗の僧侶です。浄土真宗本願寺派第5世宗主、真宗大谷派第5代門首、そして大谷本願寺の住職として、宗教界に大きな足跡を残しました。彼の諱は時芸、法印権大僧都の位にありました。

父は第4世の善如であり、権大納言日野時光の猶子となったことで、華麗なる出自と権力基盤を築きます。また、彼の血縁者には、後の本願寺第6世宗主となる長男の巧如、藤島超勝寺を開基した次男の頓円（鸞芸）、荒川興行寺を開基した三男の周覚（玄真）、そして九条経教室に嫁いだ娘がいます。

観応元年3月15日（1350年4月30日）、彼は誕生しました。青蓮院で得度し、中納言の称号を得た後、権大僧都に昇進。華やかな経歴を歩みます。至徳元年（1384年頃）には本願寺を継承し第5世宗主となりますが、ほどなくして寺務を長男の巧如に委任。自身は越中国杉谷に草庵を結び、静かな生活を送ります。

しかし、彼の静寂な生活は長くは続きませんでした。明から送られてきた難解な国書を解読する必要に迫られ、青蓮院門跡の推挙によって上洛。その卓越した才知で国書の内容を解明し、返書の草稿まで作成したことで、後小松天皇から「周圓上人」の尊称を賜ります。

さらに、後小松天皇は宮中で『無量寿経』を講じるよう綽如に依頼。その謝礼として、聖徳太子2歳の南無佛木像と『聖徳太子絵伝』8巻という貴重な品々を賜りました。

後小松天皇は綽如の寺建立の願いを聞き入れ、「勧進状」の作成を許可し「料紙」を与えました。越中国に戻った綽如は、その「勧進状」を作成し、加賀国、能登国、越中国、越後国、信濃国、飛騨国で布教活動を行いました。明徳元年（1390年）、浄財により井波の地に瑞泉寺を建立し、「瑞泉寺」の勅号を賜ります。以降は瑞泉寺を拠点に布教活動に励みました。北陸での活動が多かったため、本願寺にある親鸞聖人像を祀る厨子の鍵を下間氏に預けるという役割を担うことになります。

明徳4年4月24日（1393年6月12日）、44歳という若さで示寂しました。しかし、彼の最期については様々な説が流布しています。後小松天皇の命を受け、南朝勢力を仏法の力で鎮圧しようとしたという俗説や、南朝方の凶刃に倒れ、川に投げ込まれたという口承などが存在します。砺波市福岡の巌照寺とその門徒の間でも、越中の南朝支持者によって殺害され、遺体が谷内川に捨てられたという同様の伝承が残っています。門徒衆によって遺体が回収され、巌照寺本堂のある場所に埋葬されたと言われています。今でもその場所に2本の杉が残っており、「厳照寺の門杉」と呼ばれています。

応永元年（1394年）、寺務を委任されていた巧如が本願寺を継承し、第6世宗主となりました。

綽如の生涯は、権力者との深い関わり、卓越した知性、そして宗教への深い信仰、そして謎に包まれた最期と、ドラマチックな出来事に満ち溢れています。彼の功績は、浄土真宗の発展に大きく貢献しただけでなく、後世に様々な謎と伝説を残し、今もなお人々の心に語り継がれています。彼の生き様は、現代においても多くの示唆を与えてくれるでしょう。

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