光西寺 (中津川市)

光西寺の概要

光西寺は、岐阜県中津川市山口にある曹洞宗の寺院です。山号を古渓山と称し、木曾西国三十三観音霊場の第三十一番札所として、地域の人々に親しまれています。

歴史

光西寺は、関市にある龍泰寺の末寺として建立されました。しかし、明治5年（1872年）の火災によって諸堂宇とともに古記録も焼失してしまったため、正確な創建年代や開山、開基などの由緒は不明となっています。

火災後の復興は、明治8年（1875年）に庫裡と長屋が再建され、明治28年（1895年）に本堂が再建されました。そして、明治33年（1900年）には全ての堂宇が再建され、現在の姿となりました。

焼失を免れた他の寺院の古記録を参考にすると、延宝2年（1674年）には、光西寺が恵那郡駒場村の福昌寺から寺請証文を受けていたことがわかります。また、宝永5年（1708年）には、宗門改に関係するとみられる転出者の書上げが、光西寺の襖の中から発見されました。この書上げには、18～32年以前に遡って、婚姻によって坂下村へ転出した人々の記録が記されています。書上げの末尾には「右之通村中詮議仕、書付指上申候」とあり、村の協議を経て提出されたものであることがわかります。

さらに、『外垣庄屋萬留帳』によると、天保3年（1832年）から文久2年（1862年）にかけて、婚姻による転入・転出者や村内の異動者の書上げが、木曾代官所に提出されていたことがわかります。これらの書上げは、「乍恐奉願上候口上」と題されており、村の公式な記録として扱われていたと考えられます。天保3年（1832年）の書上げでは、具体的な転入・転出者の名前や異動理由が記載されています。

これらの記録から、光西寺が、江戸時代には村の戸籍管理や身元保証においても重要な役割を担っていたことが伺えます。当時の人々は、転入や転出の際に地請証文や寺請証文によって身元を確認し、村に受け入れられていたのです。

また、光西寺の住職が、宝永4年（1707年）に湯船沢村の天徳寺が再建された際や、正徳3年（1713年）に千旦林村の大林寺で本尊の入仏供養が行われた際にも出席していた記録が残っており、地域における寺院間の交流があったことがわかります。

中津川市指定有形文化財

光西寺には、中津川市指定有形文化財である「十一面観音庚申塔」があります。この庚申塔は、高さ75cm、幅38cmの舟形光背の石造物で、貞享年間（1684～1688年）に建立されたと考えられています。塔には、十一面観音の立像が浮き彫りされており、その下部には鶏が、台座には見ざる・言わざる・聞かざるの三猿が彫られています。このことから、庚申信仰に基づいて建立されたものであることがわかります。光西寺の庚申塔は、十一面観音像を刻んだ珍しい例として、文化財的価値が高いと評価されています。

参考文献

『山口村誌　上巻』　第四章　近世　 第三節　支配制度 二　宗門改　p450～p455
『山口村誌　下巻』　第六章　民俗　 第六節　信仰 7　寺院　光西寺　p764

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