光速船

光速船：ベクタースキャンが生み出した異色のゲーム機

光速船は、1983年 7月にバンダイが日本国内向けに発売した家庭用ゲーム機です。このゲーム機の特徴は、当時としては珍しいベクタースキャンディスプレイを採用していた点にあります。この記事では、光速船の元となったアメリカのGCE社製「Vectrex」についても詳しく解説します。

概要

光速船は、元々1982年にアメリカのGeneral Consumer Electronics（GCE）社が「Vectrex」として発売したもので、その日本版がバンダイから「光速船」としてリリースされました。アメリカでの価格は199ドル、日本では54,800円と、当時のゲーム機としては高価でした。

光速船最大の特徴は、ベクタースキャン方式のディスプレイを標準搭載している点です。これは、一般的なテレビのようなラスタースキャン方式ではなく、オシロスコープのように電子ビームで直接線を描画する方式です。そのため、シャドーマスクのない9インチの白黒CRTディスプレイが採用され、独特の線画表現を実現しています。このベクタースキャン方式を採用した家庭用ゲーム機は、光速船が唯一とされています。

操作は、4ボタンのアナログ入力対応ジョイパッドで行います。本体は置くタイプで、オプションの機器を利用すれば、コインオペレート式のアーケードゲームとしても使用可能でした。また、独自の筐体を持つアーケード版も存在しました。

ハードウェア

仕様

光速船は、ベクタースキャンディスプレイという特殊な表示方式を採用していたため、通常のテレビを接続して使用することはできませんでした。この点が、一般的な家庭用ゲーム機とは大きく異なる点です。

周辺機器

ジョイパッドは、アナログ入力に対応しており、細かい操作を必要とするゲームに適していました。

ソフトウェア

光速船のゲームソフトは、ROMカートリッジで供給されました。本体内蔵のゲームとして「マインストーム」が収録されており、カートリッジを装着せずに起動するとプレイできました。

主なタイトルは以下の通りです。

マインストーム
ハルマゲドン
スクランブルウォーズ
コズミックカズム
リップオフ
ソーラークエスト

これらのゲームは、アーケードゲームからの移植作品も含まれており、ベクタースキャンならではの独特なグラフィックで楽しむことができました。

マーケティング・反響

バンダイは、光速船の販売促進のため、店頭での有料プレイやレンタル式販売、プレイ大会のテレビ中継といった様々な施策を実施しました。また、当時バンダイがスポンサーを務めていた特撮テレビ番組『兄弟拳バイクロッサー』に、光速船が小道具として登場するなど、メディアへの露出も積極的に行いました。

しかし、本体価格が高額であったこと、本体が非常に大きく持ち運びや設置が困難であったことから、売り上げは伸び悩みました。当時の家庭用ゲーム機としては異例ともいえる特徴が、逆に一般ユーザーには受け入れられなかったと言えるでしょう。

移植版と現状

日本国内で光速船のゲームを遊べる移植版として、2012年12月より配信されているiOS向けユニバーサルアプリ「Vectrex Regeneration」があります。このアプリは、各ゲームの再現だけでなく、「Vectrex」発売当時のテレビCM動画も収録されています。また、インディーズ作品の追加収録も予定されており、今後の展開が期待されています。

小型化プロトタイプの発見

21世紀初頭から、光速船の小型化プロトタイプの存在がインターネットコミュニティの間で噂されていました。2003年には、Edge Magazine 122号に小型化プロトタイプの目撃談が掲載されました。さらに、2010年には、GCEの買収元であるMilton Bradley Companyの元従業員の息子とされる人物から、小型化プロトタイプの写真がインターネット上に投稿されました。

2018年、アメリカのNational Videogame Museumは、光速船の小型化プロトタイプを入手したことを公表し、修繕後、展示を開始しました。このプロトタイプは、小型化に伴いボタン配置などが変更されており、製品版とは異なるデザインになっています。この発見は、光速船の歴史を語る上で重要な出来事となりました。

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