全ギリシャ社会主義運動

全ギリシャ社会主義運動（PASOK）の興亡：ギリシャ政治史における軌跡

全ギリシャ社会主義運動（PASOK）は、1974年から2018年まで存在したギリシャの中道左派政党であり、長らくギリシャ政治の中枢を担ってきた重要な勢力でした。本稿では、PASOKの創設から解党までの歴史、その政策的特徴、そしてギリシャ政治への影響について詳細に解説します。

創設と初期の躍進

1974年、ギリシャ軍事政権の崩壊と民主主義の回復という歴史的転換期に、アンドレアス・パパンドレウによってPASOKは創設されました。パパンドレウは、マルクス経済学の知識を持つ人物であり、PASOKは当初、左派ナショナリズムと急進的な社会主義を掲げる政党でした。しかし、1974年の総選挙では、新民主主義党（ND）に大差をつけられ、議席獲得数は限定的でした。

それでも、PASOKは着実に支持を拡大し、1977年の選挙では議席数を大幅に増加させました。そして、1981年の選挙ではついに第1党となり、ギリシャ初の左派政権を樹立しました。パパンドレウ首相の下、PASOK政権はNATOやEEC（後のEU）との関係を見直し、社会改革を積極的に推進しました。憲法改正による大統領権限の削減や、社会福祉政策の強化などがその例です。

政権の維持と内紛

1980年代には、PASOKは幾度かの総選挙で勝利を収め、政権を維持しました。しかし、1989年には支持率が低下し、政治的混乱に陥りました。この間、パパンドレウはクレタ銀行絡みのスキャンダルに巻き込まれ、党内は分裂の危機に瀕しました。

1990年代に入ると、パパンドレウの後を継いだコンスタンディノス・シミティスは、西欧統一主義を重視する政策を推進し、ギリシャのユーロ圏加盟を主導しました。シミティスは、2004年[[アテネオリンピック]]の開催決定にも大きく貢献しました。しかし、PASOKは次第に支持率を低下させ、2004年の総選挙で政権を失いました。

経済危機と解党

2009年、パパンドレウの息子であるゲオルギオス・パパンドレウが党首となり、再び政権を奪還しました。しかし、ギリシャは直後に深刻な経済危機に直面し、巨額の債務隠し問題が発覚しました。経済危機への対応をめぐってPASOKは内部対立を深め、2012年にはゲオルギオス・パパンドレウは首相を辞任。その後、党は支持率を大幅に低下させ、2015年の総選挙では議席数を激減させました。

2017年、PASOKは他の左派政党と合流し、「変化のための運動」(KINAL)を結成しました。これは、PASOKの歴史に終止符を打つ出来事となりました。かつてギリシャ政治をリードしたPASOKは、経済危機や党内抗争などの困難を乗り越えることができず、歴史の舞台から姿を消しました。

PASOKの遺産

PASOKは、ギリシャの民主主義発展に大きな貢献を果たした一方で、経済危機への対応や党内抗争、また指導者のスキャンダルなど、数々の課題を抱えていました。その歴史は、ギリシャ政治の複雑さとダイナミズムを反映していると言えるでしょう。PASOKの興亡は、現代ギリシャ政治を理解する上で重要な教訓を提供するものです。

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