全国区制

全国区制（ぜんこくくせい）について

全国区制は、日本で導入された選挙制度の一つであり、選挙区を特定せず全国を一つの選挙区とするという画期的な方式です。1947年から1980年の間、特に参議院議員の通常選挙において用いられていました。この制度により、全国の有権者が共通の候補者に投票し、選出された議員は全国的な視点をもって政策を推進することが期待されました。

概要と導入理由

全国区制は、最初の導入時に大村清一内務大臣が「全国的に有名有為で優れた学識経験を持つ人材を選び出すこと」を目的としていると説明しました。この制度は、職能代表制を取り入れた形でもあり、特定の地域にとらわれない多様な候補者が選出される可能性を持っていました。全国一選挙区のため、候補者は地域に依存せず全国の有権者と直接対話でき、全ての候補者が同じ条件で審査を受けることができました。

ただし、この制度にはいくつかの問題点もありました。全国的にキャンペーンを展開しなければならなかったため、選挙活動にかかる費用が膨大で、その結果金権選挙の温床となる傾向がありました。「銭酷区」や「八当七落」といった皮肉の表現が示す通り、有名人や組織の支持を得た候補者が選ばれやすいという現実がありました。さらに、候補者数が増加することで有権者との距離感が生まれ、有権者からの支持を得ることが難しいと感じる局面もあったのです。

選挙の実施と問題点

全国区制では、無所属での立候補が可能であったため、さまざまなバックグラウンドを持つ候補者が選挙に参加しました。定数50人に対して90人から110人の候補が立候補することが一般的であり、選挙戦は非常に競争が激しいものでした。また、当選者が一つしか議席を得られない単記非移譲式投票のため、多くの票が取られながらも議席獲得に結びつかないという現象が生じました。

季節は夏であり、候補者は全国を奔走する必要があったため、体力的な消耗も果てしないものでした。中には選挙戦のさなかに体調を崩して亡くなる候補者もおり、この事態は「残酷区」と呼ばれることになりました。

制度の変更

これらの問題を受けて、1983年からの参院選では従来の全国区制から政党名で投票し、公示された名簿に基づく比例代表制に移行しました。その後2001年に非拘束名簿式の比例代表制が導入され、実質的に全国区制が復活したとみなす意見も存在しています。これは、選挙の多様性を高める一方で、特定の組織に依存しない候補者育成の可能性をもたらしました。

呼称と影響

全国区制はその特性から「残酷区」や「銭酷区」といった呼称で揶揄されることもありました。これは、選挙活動に伴う過酷さや経済的な負担が大きいことから生まれた表現です。この制度のもとで、選挙は単なる政治行為にとどまらず、候補者や有権者にとって深く考えるべきテーマであったと言えるでしょう。

結論

全国区制は日本の政治史において重要な位置を占めており、多くの問題と共に、政治参加の可能性を広げる側面も持っていました。今後も、この制度が持っていた意義や問題を見つめ直し、より良い選挙制度の構築に向けた議論が必要です。

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