全天X線監視装置

全天X線監視装置(MAXI)とは

全天X線監視装置（Monitor of All-sky X-ray Image, MAXI）は、国際宇宙ステーション（ISS）の「きぼう」日本実験棟に取り付けられたX線観測装置です。2009年7月にSTS-127ミッションで運ばれ設置されました。地球を周回するISSの特性を活かし、全天のX線源を監視し、突発的な現象を捉えることを目的としています。

MAXIの重要性

宇宙から飛来するX線は大気によって吸収されるため、地上からの観測は困難です。そのため、X線観測には宇宙望遠鏡が用いられますが、従来の望遠鏡は特定の天体を長時間観測することに特化しており、変動する天体や突発的な現象の観測には不向きでした。MAXIは、ISSが約96分で地球を一周することを利用し、全天を定期的に観測できます。これにより、X線新星やガンマ線バーストなど、突発的な天体現象をいち早く発見し、詳細な観測に繋げることが可能となりました。

MAXIが検出した突発天体情報は、[インターネット]]を通じて即座に公開され、他の観測施設（Swift、INTEGRALなど）による追跡観測を可能にし、天体現象の解明に貢献しています。MAXIは、宇宙航空研究開発機構]を中心に、[[理化学研究所、大阪大学、東京工業大学、青山学院大学、日本大学、京都大学などの協力によって開発されました。

観測の歴史

MAXIは、2012年に運用を終えた米国のRXTE-ASMの観測を引き継ぎ、全天のX線天体の監視を行っています。これにより、新たな天体の発見や、変動するX線天体の継続的な監視を実現しています。以下に主な出来事をまとめます。

2009年7月16日: スペースシャトル・エンデバー号(STS-127)で打ち上げ
2009年7月23日: 「きぼう」船外実験プラットフォームに設置
2009年8月13日: 連続観測を開始
2009年8月18日: ファーストライト画像を発表
2009年11月26日: 世界最速で全天X線画像を取得
2009年12月15日: 理研からデータ公開を開始

観測装置

MAXIには、効率的な全天観測のために2種類のスリットカメラが搭載されています。

ガススリットカメラ(GSC): 2-30keVのX線を観測
X線CCDスリットカメラ(SSC): 0.5-10keVのX線を観測。高いエネルギー分解能も備えているため、X線分光による天体の性質解析が可能

主な観測成果

MAXIは、数々の重要な発見に貢献してきました。以下に主な成果を挙げます。

2011年8月25日: 39億光年先の銀河中心にある巨大ブラックホールに星が吸い込まれる瞬間を世界で初めて観測
2013年2月22日: “極”超新星（ハイパーノバ）の痕跡を天の川銀河で初めて発見
2013年11月14日: 新星爆発の瞬間の観測に成功
2013年11月22日: 観測史上最大級のガンマ線バーストを宇宙と地上から観測

2014年3月末時点で、MAXIは単独で13個のX線新星を発見しており、現在ではX線新星の発見の約8割をMAXIが担っています。また、2009年8月の運用開始から2013年10月までに、11個のブラックホール候補天体を発見。そのうち5個はMAXI単独、1個はMAXI/Swiftの同時発見によるものです。これらの実績からも、MAXIは新星発見において主導的な役割を果たしています。

関連情報

以下に関連する情報へのリンクを掲載します。

MAXI J1910-057/Swift J1910.2-0546: MAXIが最初に発見したX線新星。軟X線が強い。
X線天文学: X線を観測することにより宇宙の現象を研究する分野
X線宇宙望遠鏡: 宇宙空間でX線を観測するための望遠鏡
すざく, スウィフト, チャンドラ, XMM-Newton: 他の主要なX線観測衛星
外部リンク
JAXAきぼう日本実験棟 全天X線監視装置
理化学研究所極限宇宙研究推進グループ
NEC宇宙ソリューション「全天X線監視装置(MAXI)」
MAXI観測データ公開サイト
「MAXI」がはえ座にX線新星を発見　ブラックホールの可能性 - アストロアーツ
MAXIの論文が日本天文学会の欧文研究報告論文賞を受賞
MAXIが見張った5年間のX線宇宙

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