八ヶ山駅

富山県富山市石坂新に位置していた八ヶ山駅（はっかやまえき）は、かつて富山地方鉄道射水線に存在した鉄道駅です。地域の交通を担っていましたが、射水線の廃止に伴い、1980年（昭和55年）4月1日にその役割を終え、廃駅となりました。

歴史をたどる変遷

八ヶ山駅の開業は1924年（大正13年）10月12日に遡ります。当時は越中電気軌道が富山北口駅と四方駅の間を開通させた際に、「御廟口駅（ごびょうくちえき）」として営業を開始しました。この初代駅は新富山駅から2.1キロメートルの地点に設けられていました。その後、1927年（昭和2年）2月13日には、鉄道会社の名称が越中鉄道へと改められたことに伴い、同鉄道の駅となります。

開業から間もない1929年（昭和4年）6月15日、初代の御廟口駅は廃止され、約0.7キロメートル四方寄りの地点へ移設されました。これにより、「御廟口駅（2代目）」として再開業を果たし、新富山駅からの距離は2.8キロメートルとなりました。この移設の際には、当駅と八町駅の間にあった百塚駅（ひゃくづかえき）が廃止されています。

2代目御廟口駅は、1929年から1930年（昭和5年）頃にかけて、現在の駅名である「八ヶ山駅」へと改称されます。このとき、新富山駅からの営業キロ程も2.7キロメートルに修正されました。時代の流れを受け、1943年（昭和18年）1月1日には交通統合が実施され、八ヶ山駅は富山地方鉄道射水線の駅として新たな歩みを始めます。

駅の機能にも変化がありました。かつては列車交換が可能な構造でしたが、1974年（昭和49年）4月5日には交換設備が廃止され、単線仕様となりました。また、時期は不明ながら、駅業務は業務委託化されていたとされています。そして、地域の足として親しまれた射水線全体の廃線という決定に伴い、八ヶ山駅は1980年（昭和55年）4月1日に廃止されました。

駅施設の姿

廃止直前の八ヶ山駅は、線路の西側（新港東口方面を向いて左側にあたる、旧下り線）に単式ホーム1面1線を持つ地上駅でした。しかし、かつては相対式ホーム2面2線を有し、列車の行き違いが可能な交換駅としての機能も担っていました。駅舎に面した西側のホームが下り線用、線路を挟んだ東側のホームが上り線用でした。交換設備が廃止された後も、使われなくなった旧上り線側の線路とホームは、側線として残されていました。

駅は業務委託駅であり、駅舎は構内の西側に設けられていました。駅舎は築堤の上に位置していたため、掘割式であったホームへは、屋根付きのコンクリート製階段を使って下りる構造となっていました。特徴的な三角屋根を持つ洋館風の建物だったと伝えられています。ホーム自体は掘割の中にあり、旧上り線側に待合所代わりの上屋が設置されていました。

周辺環境と賑わい

八ヶ山駅の周囲には、かつて地域の賑わいを見せる施設が存在しました。昭和30年代にかけては、近くの八ヶ山に「八ヶ山遊園」が営業しており、行楽シーズンには当駅を起点とした臨時列車が運行されることもあったと言います。八ヶ山遊園は桜の名所としても知られていましたが、後に閉園しています。また、南方には富山ヘルスセンターがあり、学校の遠足などで多くの人が利用していました。

その他、駅周辺には富山県道7号富山八尾線が通り、北方の八町寄りには鉄道用の変電所が設けられていました。さらに、呉羽山公園やその中の五百羅漢、神通川といった富山の象徴的な場所も近くに位置していました。

廃止後の面影

八ヶ山駅を含む射水線の線路跡は、廃止後に富山地方鉄道バスの専用道路として活用されることになりました。当駅のあった辺りは、現在このバス専用道路の富山方面への入口となっています。専用道路化された後も、鉄道時代の雰囲気を色濃く残していました。

1997年（平成9年）時点では、かつてのホームは路盤が盛り土された形で確認でき、旧上り線側ホームにあった上屋はバス利用者の待合所として転用されていました。駅舎自体は時期不明ながら撤去されていましたが、ホームから駅舎へ上るためのコンクリート製階段（屋根は撤去済み）は残され、そのまま使用されていました。2006年（平成18年）5月、2010年（平成22年）、そして2018年（平成30年）の時点でも同様の状況が確認されており、駅舎跡の改札口があった場所も見て取れたといいます。

駅の北側にあった変電所は、1997年時点ではまだ存在していましたが、その後2006年5月から2008年の間に解体されました。また、廃止後にバス待合所として使われていた、駅にあった屋根付きの待合所も、2017年頃に解体されています。時代の経過とともに、駅の遺構は少しずつ姿を変えていきました。

隣接駅

八ヶ山駅が営業していた頃の射水線において、富山北口駅と八町駅の間に位置していました。

- 富山北口駅 - 八ヶ山駅 - 八町駅

なお、前述の通り、御廟口駅（2代目）への移設に伴い、当駅と八町駅の間に存在した百塚駅は廃止されています。

八ヶ山駅は、富山市の郊外における鉄道交通の一翼を担い、周辺の行楽施設へのアクセスを支えた駅として、その歴史を刻みました。

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