八丁原発電所

八丁原発電所

概要

八丁原発電所は、大分県玖珠郡九重町に位置する地熱発電所です。九電みらいエナジー（九州電力の子会社）によって運営されており、その出力は11万kWと、日本国内最大級の規模を誇ります。この発電所は、一般家庭約3万7千軒分の電力需要を賄う能力を持ち、九州地方で2番目、全国では5番目に事業用として完成しました。

標高1,100メートルの高原、活火山である九重連山の近くに位置しており、この地域の地熱地帯から得られる高温蒸気を利用して発電を行っています。発電所は無人で運転されており、約2km離れた場所にある大岳発電所からオペレーターが遠隔で監視と操作を行っています。

また、発電所には展示館が併設されており、一般の人々も見学することができます。発電に必要な蒸気は、深さ760mから3,000mの31本の井戸（うち生産井は21本）から供給され、1時間あたり合計890トンもの蒸気を活用しています。発電に使用された後の熱水は、10本の還元井を通して地下に戻されるほか、一部は筋湯温泉供給株式会社を通じて近隣の温泉地に供給されています。ただし、過去にはこの熱水の利用に関して誤解が生じ、週刊ポストにより「工業廃水を温泉と偽装」と報道されたことがありますが、九州電力、大分県、九重町は直ちに反論し、温泉そのものに問題はないと発表しました。

発電設備

発電所の総出力は112,000kWです。主な発電設備は以下の通りです。

1号機
定格出力：55,000kW
営業運転開始：1977年6月
2号機
定格出力：55,000kW
営業運転開始：1990年6月
バイナリー発電
定格出力：2,000kW
営業運転開始：2006年4月

特に注目すべきは、構内に設置された地熱バイナリー発電施設です。ここでは、当初160℃の熱水を利用していましたが、温度が130℃まで低下したため、国内初のバイナリーサイクル方式が導入されました。このシステムでは、沸点の低いペンタンを熱媒体として利用し、比較的低温の蒸気や熱水でも発電が可能です。イスラエルのオーマット社製の設備が採用され、2006年4月から2年間の試験運転を経て、営業運転を開始しました。

沿革

八丁原発電所の歴史は以下の通りです。

1949年：大分県下の地熱地帯の地質調査を開始
1953年：九重町大岳地区の地質調査を開始
1977年6月：1号機の営業運転開始
1990年6月：2号機の営業運転開始
2003年8月：八丁原バイナリー発電施設の建設工事着工
2006年4月：八丁原バイナリー発電所が試験運転開始
2008年：八丁原バイナリー発電所が営業運転開始
2024年4月：八丁原発電所が九州電力から九電みらいエナジー株式会社に移管

見学・学習

発電所には展示館が併設されており、地熱発電の仕組みや発電所の概要について学ぶことができます。また、発電所内の見学も可能です。周辺には阿蘇くじゅう国立公園の長者原ビジターセンターがあり、環境学習の場としても利用されています。

脚注

八丁原・大岳発電所 九州電力
八丁原発電所展示館 九州電力
九州電力地熱八丁原バイナリー発電設備見学報告 - 機関誌「電機」2005年3月号

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