八九式飛行艇

八九式飛行艇

八九式飛行艇（はちきゅうしきひこうてい）は、大日本帝国海軍が運用した飛行艇で、略符号は「H2H」です。この機体は、主に軍事目的で設計されており、1930年代の日本において重要な戦力の一部を成しました。

開発歴

八九式飛行艇の開発は1929年に始まりました。このプロジェクトは、広海軍工廠が主導し、設計を担当したのは岡村純造兵少佐です。開発当初は、一五式飛行艇の性能を向上させることを目指していました。1930年の秋に試作1号機が完成し、その後も川西航空機や愛知時計電機の航空機部門が製造に関与しました。

生産数は約17機と限られていましたが、その機体性能は評価され、上海事変や日中戦争の初期に活用されました。戦後は練習機としても使用され、長い間海軍に貢献しました。ただし、試作2号機は飛行試験中に発生した火災によって焼失してしまったという不運もありました。

機体の特徴

八九式飛行艇は、一五式飛行艇を基にした双発複葉機です。これまでの一五式は全木製でしたが、八九式は胴体が全金属製で、主翼は金属製の骨組みに羽布が張られた構造を採用しています。この変更により、機体の強度が向上し、より高い耐久性を実現しました。

さらに、エンジンについても改良が施されており、より強力なものが搭載されています。特に、設計にあたってはイギリスから輸入されたスーパーマリン サザンプトン飛行艇が参考にされており、海外の技術を取り入れることで、国内の航空機産業の発展にも寄与しました。

諸元

八九式飛行艇の量産型はいくつかの主要な諸元を持っています。具体的には、全長は16.25m、全幅は22.12m、全高は5.96mです。主翼面積は120.5m²、機体の自重は4,370kg、全備重量は6,500kgとなっています。

エンジンには広廠除の九〇式液冷W型12気筒エンジンが2基搭載され、最大出力は750 hpに達します。このため、最大速度は196km/h、巡航速度は130km/hとなります。また、実用上昇限度は4,000mで、航続距離は1,638kmを誇ります。

武装と乗員

八九式飛行艇は、武装の面でも優れた性能を発揮しています。武装には、7.7mmの旋回機銃が4門装備され、最大で250kgの爆弾を2つ搭載可能です。乗員は7名で構成されており、様々なミッションに対応できるように設計されています。

このように、八九式飛行艇はその技術と性能において、当時の航空機として際立った存在でした。今でも多くの航空機愛好家や歴史研究者によって、その価値や意義が見直されています。

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