八人芸

八人芸とは

八人芸は、一人で複数の楽器の音色や声色を使い分け、まるで八人が同時に演奏しているかのように観客を魅了する寄席芸です。この芸は、元々見世物小屋で視覚障害を持つ座頭によって演じられていたため、「八人座頭」とも呼ばれていました。つまり、八人芸は視覚障害者の間で生まれた伝統芸能だったのです。

八人芸の歴史

江戸時代中期の安永・天明の頃、河島歌命という人物が現れ、その門下である河島歌遊が寄席に進出しました。歌遊は、当時の人気落語家でも成し得なかったとされる高額な席料を取っていたと伝えられています。その後、八人芸は十二人芸、十六人芸といった、より大人数を模した芸へと発展していきました。

現在の八人芸

残念ながら、現代では八人芸を演じる芸人はいません。しかし、この芸は日本の腹話術の起源の一つとも言われており、その歴史的な意義は大きいと言えるでしょう。

八人芸を演じた人々

歴史上、八人芸を演じた人物として、以下の名前が記録されています。

牛島登山
豊島寿鶴斎
西國坊明學
津島留吉（NHKアーカイブスに映像記録あり）

特に津島留吉は、NHKの番組で八人芸を披露した映像が残されており、その芸の様子を知ることができます。

八人芸が登場する作品

八人芸は、小説や浮世草子など、様々な作品の題材にもなっています。

浮世草子『好色一代女』（17世紀末成立）：江戸時代の風俗を描いた作品に、八人芸の様子が描写されています。
江戸川乱歩『踊る一寸法師』：乱歩の小説にも、八人芸を思わせる描写が登場します。
* 野村胡堂『銭形平次捕物控 八人芸の女』：時代小説のシリーズにも、八人芸をテーマにした作品があります。

このように、八人芸は単なる芸能としてだけでなく、文化的な側面からも様々な形で人々に影響を与えてきました。

八人芸の魅力と現代への影響

八人芸は、一人の人間が複数の役割を演じ分けるという、非常に高度な技術を必要とする芸です。その魅力は、観客を驚かせ、楽しませるエンターテイメント性だけでなく、視覚障害を持つ人々が自身の才能を発揮し、社会的に活躍する機会を作ったという点にもあります。今日では、その伝統を受け継ぐ芸人はいませんが、日本の芸能史において重要な役割を果たしたことは間違いありません。

八人芸は、日本の伝統芸能の多様性と、そこに関わる人々の創造性を象徴する存在と言えるでしょう。

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