八条宮穏仁親王

八条宮穏仁親王（はちじょうのみや やすひとしんのう）は、寛永20年（1643年）に生まれ、寛文5年（1665年）に23歳で亡くなった江戸時代前期の皇族です。世襲親王家である八条宮（桂宮）の第三代当主であり、後水尾天皇の第十一皇子として生まれました。母は櫛笥隆致の娘、藤原隆子（逢春門院）です。幼少の頃は幸宮・若宮、または阿古麿（あこまろ）と呼ばれていました。

承応3年（1654年）、穏仁親王は智忠親王の養子となります。当時、智忠親王には実子がいなかったため、後継者として迎えられたのです。この背景には、穏仁親王の兄である後光明天皇が急逝したという事情がありました。万が一、皇統が途絶える事態に備え、皇位継承の候補者を確保するという目的も、この養子縁組には含まれていたと考えられます。

明暦元年（1655年）に親王宣下を受け、元服。二品に叙せられ、式部卿に任ぜられました。寛文2年（1662年）7月には、養父である智忠親王の薨去を受けて、八条宮家を継承しました。

しかし、穏仁親王自身も寛文5年（1665年）10月3日に薨去。わずか23歳という若さでした。法名は金剛寿院。

穏仁親王の短い生涯は、当時の皇室における皇位継承の不安定さや、皇統維持の重要性を示す一例と言えるでしょう。兄である天皇の急逝という事態を受け、皇位継承の潜在的な候補者として、幼い頃から将来を嘱望されていたことが伺えます。しかし、志半ばで早世したことは、本人にとっても、また皇室にとっても大きな損失であったと考えられます。

八条宮家を継承してからの事績については、詳しい記録は残っていませんが、その短い期間においても、宮家を維持し、皇室の一員としての役割を果たそうと努めていたことでしょう。

もう一度検索