八楽溜

八楽溜（はちらくだめ）

八楽溜は、滋賀県東近江市大沢町に位置する風光明媚なため池です。その貯水量は約9000立方メートルに及びます。

歴史

この地の歴史は古く、1616年（元和2年）に帰農した武士たちが大沢地区を開墾したことに始まります。しかし、周辺の村からの農業用水の供給が困難であったため、当時の彦根藩主であった井伊直孝に溜池の造営を請願しました。その後も藩の全面的な助成を受けながら補修が行われた記録が古文書に残されています。この事実は、八楽溜が地域にとって極めて重要な存在であったことを物語っています。

1980年（昭和55年）には排水施設が整備され、1994年（平成6年）には堰堤の補強工事が行われました。これらの改修を経て、八楽溜は現在、約16ヘクタールの農地を潤す灌漑用水源として機能しています。

その歴史的、文化的価値が認められ、2010年（平成22年）3月25日には農林水産省の「ため池百選」に選定されました。さらに、「滋賀のため池50選」にも選ばれており、滋賀県を代表する溜池の一つとして広く知られています。

自然

八楽溜の景観を特徴づけているのは、中央に浮かぶ弁天島です。湖畔には桜が植えられており、春には美しい桜並木が溜池を彩ります。また、アシやガマなどの水生植物が繁茂し、シラサギ、カイツブリ、マガモなどの鳥類をはじめ、多種多様な魚類が生息するなど、豊かな生態系が育まれています。これまでに確認された生物は、合計で106種に及ぶと言われています。

地域との関わり

江戸時代から約4年に一度、伝統的な漁法である「総つかみ・オオギ漁」が行われていましたが、一時中断していました。しかし、1998年（平成10年）に地元の「郷づくり活動」の一環として復活し、池の底に溜まった泥を巻き上げて流す「泥さらえ」と合わせて、魚の掴み取りイベントが開催されるなど、地域住民の交流の場となっています。

また、親水公園では、「八楽夏まつり」や「八楽溜水上運動会」などのイベントが開催され、近隣地域からも多くの人々が訪れ、賑わいを見せています。八楽溜は、自然に親しみ、地域住民が交流を深めるための貴重な場所として、愛され続けています。

アクセス

ほっとおおざわ

八楽溜は、単なる農業用水源としてだけでなく、豊かな自然、歴史、文化、そして地域住民の生活が息づく、貴重な存在です。訪れる人々に安らぎと潤いを与え、地域の活性化に貢献する、かけがえのない財産と言えるでしょう。

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