八王子社 (奈良市納院町)

八王子社（八屋神社/蜂屋神社）

八王子社は、奈良県奈良市納院町に位置する神社です。一般には八屋神社、あるいは蜂屋神社とも呼ばれています。この神社は、薬師堂町にある御霊神社の摂社として祀られています。

歴史

『奈良坊目拙解』という文献に「八王子社」の名が見られ、これが現在の八王子社であるとされています。文献によれば、近江国（現在の滋賀県）の坂本にある日吉八王子から勧請されたと伝えられています。

長者「蜂屋」の跡

室町時代以降、八王子社が建つ納院町一帯では、蜂屋という姓を持つ冶金業者が繁栄していました。康正年間には、蜂屋五郎三郎という人物が有徳者として知られ、興福寺に有徳銭を納めていたと記録されています。また、納院町はかつて蜂屋辻子（ずし）とも呼ばれていたそうです。

戦国時代に入ると、茶人として名高い蜂屋紹佐がこの地に住み、「蜂屋殿」と呼ばれ、時の人々から一目置かれる存在でした。紹佐は、財産は子孫に受け継がせるのが難しいと考え、井戸を掘り、その中に砥石を積み重ねて金銭を隠しました。しかし、元亀2年（1571年）7月に紹佐が松永久秀の多聞山城内で亡くなった後、曽孫の代になって蜂屋家が困窮し、隠した金を探すために井戸を掘り返したところ、砥石はすべて墉石（ようせき：土塀などに使われる石材）に変化しており、金は見つからず、家は衰退したという伝承が残っています。現在の八王子社の所在地は、かつて蜂屋氏の屋敷があった場所であり、蜂屋神社の異名もこの故事に由来しています。

祭神

八王子社の祭神は以下の通りです。

大山咋神（おおやまくいのかみ）: 大年神の御子であり、山末之大主神（やますえのおおぬしのかみ）とも呼ばれます。

関連項目

八王子権現
ならまち

参考文献

奈良市史編集審議会編『奈良市史 社寺編』、吉川弘文館、1985
『角川日本地名大辞典29 奈良県』、角川書店、平成2年 ISBN 4-04-001290-9
第１回奈良市眺望景観検討懇談会 参考資料1 心で感じる景観の特性について

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