八田原ダム

八田原ダムの概要

八田原ダム（はったばらダム）は、広島県世羅郡の世羅町にあるダムで、芦田川の中流部に建設されています。このダムは、国土交通省中国地方整備局が管理する国土交通省直轄のダムで、堤高は84.9mの重力式コンクリートダムです。主な目的は、治水と利水にあり、福山市を含む備後地域の経済圏のために重要な役割を果たしています。

ダムによって形成された湖は「芦田湖」と名付けられ、川の名前がそのまま織り込まれています。上流には小規模な三川ダムがありましたが、増え続ける水需要に対処するため、八田原ダムの建設が決定されました。福山市を中心とした備後経済圏では、工業用水や生活用水の確保が急務であり、洪水調整の役割も担うためにこのダムが必要とされたのです。計画が始まったのは1973年で、実際の建設には約25年の歳月を要しました。

このダムの建設に伴い、八田原地域の住民55戸が移住を余儀なくされました。また、1989年にはJR西日本の福塩線が新たに八田原トンネルを経由する経路に変更され、その結果、八田原駅は廃止されることとなりました。2020年では、芦田川水系での大規模な洪水対策として、八田原ダムの事前放流に関する協定が結ばれました。この協定では、大雨が予想される場合、3日前からの放流によりダムの水位を下げる運用が可能となっています。

周辺の環境と観光名所

八田原ダムが形成した人造湖、芦田湖には「夢吊橋」が架かっています。夢吊橋は特異な構造で、ケーブルがコンクリートで包まれた床板を持つ単径間吊床版橋として知られ、147.6mの支間長はこの形式で世界一の長さを誇ります。さらに、芦田湖にかかる橋には、八田原大橋や井庄原大橋という斜張橋もあります。

湖の周辺には八田原グリーンパークや芦田湖オートキャンプ場も整備され、アウトドアを楽しむ場所として親しまれています。また、ダムの下流には河佐峡という行楽地もあり、多くの観光客が訪れます。

発電所との関連

八田原ダムの建設により、中国電力が運営する宇津戸ダムは水没してしまいました。宇津戸ダムは1963年に竣工した重力式コンクリートダムで、発電用の水を供給するものでしたが、ダムが新たに建設されることになったため、代わりとなる取水設備が必要でした。ダム建設に際して、宇津戸ダムが位置していた土地の水を確保するための工事が行われ、そのための用水は芦田川本流に設けられた井庄原堰から、無圧トンネルを通じて宇津戸川に導かれました。

また、発電所の存続を図るため、ダム本体は撤去されず、渇水期にはその姿が現れることもあります。失われた山林を管理するために、宇津戸川を渡るために建設されたのが夢吊橋であり、観光地としても利用されています。

八田原ダムはその重要な役割の一方で、周辺地域における生活や観光の面でも大きな影響を与えています。自然と人間の共存を目指すダムとして、今後も地域に寄与し続けることでしょう。

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