八重山キリシタン事件

八重山キリシタン事件

八重山キリシタン事件は、17世紀前半に琉球王国で発生したキリスト教徒摘発事件です。この事件は、当時の琉球王国が薩摩藩の支配下にあった状況と、江戸幕府によるキリスト教禁教令という二つの大きな歴史的背景の中で起こりました。

事件の背景

1429年に第一尚氏王統によって統一国家が形成された琉球王国は、1470年に第二尚氏王統に引き継がれ、海洋貿易国家として繁栄しました。しかし、1609年に薩摩藩による琉球侵攻を受け、実質的に薩摩藩の支配下に置かれることになります。この支配は、宮古諸島や八重山諸島にも及びました。

一方、日本では1603年に江戸幕府が開かれました。当初、幕府は貿易振興のためにキリスト教を黙認していましたが、1612年には幕府直轄領、1613年には全国に対し禁教令を出し、キリスト教は厳しく禁じられるようになりました。

事件の概要

1624年、一隻のスペイン船が八重山諸島の石垣島に漂着しました。この船には、ドミニコ会神父であるファン・デ・ロス・アンヘレス・ルエダが乗船していました。石垣島の有力者であり、宮良の頭職を引退していた石垣永将は、漂着者たちを保護し、さらにキリスト教の教えを受けたと疑われ、琉球王府によって流罪に処せられました。

『八重山年来記』によると、石垣永将は石垣島の富崎に漂着した南蛮船の乗組員に牛を数十頭与え、自宅に数日間泊めたことが罪に問われ、「稽古物」という理由で死罪と家財没収に処せられ、子孫も流罪になったとされています。

しかし、『薩藩旧記雑録』には、1634年の記録として「八重山島の宮良という者が南蛮宗（キリスト教）に染まったため、流罪に処し、その後火あぶりにする」と記されています。この記録が正しければ、永将は一度流罪になった後、1634年に薩摩藩によって火刑を命じられたことになります。結果として、永将は1635年に流刑地の渡名喜島で火刑に処せられ、弟の永定も島原の乱の後に処刑されました。また、ルエダ神父も粟国島に流された後、殺害されました。

事件の影響

この事件をきっかけに、琉球王国でも本格的な禁教政策が実施されることになりました。これは、琉球国内のキリシタン弾圧だけでなく、弾圧を逃れて九州などから逃亡してきたキリシタンや、外国船の漂着による宣教師の上陸を防ぐためのものでもありました。

石垣永将が火刑に処せられた翌年の1636年、薩摩藩は琉球に対し宗門改め（宗門改）を実施するよう命じました。これにより、キリスト教徒ではないと認められた住民には手札が渡されました。その後も5年から10年の間隔で宗門改めが実施され、各間切やシマに宗旨の点検を報告させていました。また、この政策と並行して、琉球王府による宮古・八重山統治もより厳格化していきました。

八重山キリシタン事件は、琉球王国が薩摩藩の支配下で、江戸幕府の禁教政策の影響を受けながら、独自のキリスト教弾圧を行った事件として、その後の琉球の歴史に大きな影響を与えることになりました。

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