公娼

公娼制度の概要

公娼とは、正式に営業許可を得ている娼婦のことを指します。これは、養成された売春活動であり、法的に認可されています。公娼制度は、特に近代において国家や都市によって管理され、一定の基準のもとに商品化された性行為が合法とされる仕組みを意味します。山下英愛はこの制度を「国家や都市で一定基準のもとに女性の買春を公認し、売買春を適法行為とみなすこと」と定義し、さまざまな歴史的文脈でその発展を追跡しています。

近代公娼制度の成立

近代公娼制度の背景には、ナポレオン戦争による性病の流行があり、衛生管理が重要視されるようになりました。秦郁彦は、19世紀初頭にこの制度が始まったと指摘しています。また、藤目ゆきは、近代の公娼は「軍隊慰安と性病管理を機軸とした国家管理売春の体系」として、まずフランス政府において確立されてから、欧州や日本に普及したと述べています。これにより、日本の公娼制度も1872年（明治5年）の娼妓解放令により、法的根拠を持つ形で整備されていきます。

日本での公娼制度は、当初から厳格な管理のもとで運営され、娼妓は届け出を行うことで営業許可を得て、指定された区域でのみ業務を行うことが認められました。これにより、売春行為は合法的に認可されながらも、人身売買や強制労働といった側面は排除される試みが続けられました。

公娼制度の実態と問題

日本の公娼制度は、江戸時代の遊廓制度を受け継ぎ、主に集娼制の形態で存在しました。公娼は一般に日常的な生活空間と区画内に制限され、その運営には特定の社会的・文化的背景がありました。これは、国際的な視線に照らし合わせて国のイメージを保とうとする試みの一環であり、日露戦争後の満州大連においても現地の文化や意識に配慮した施策がなされていたと指摘されています。

公娼制度は、法律で性病検査を義務づけるなど、一定の安全性を保証する方針を持っていましたが、実際の運用では様々な問題が発生しました。遊廓内では、女衒による前借金や搾取といった不正行為が横行し、岳示な条件のもとで働く女性たちが多く存在しました。これにより、無知や経済的な圧迫を利用した不正契約が広がり、公娼廃止運動の一因となったのです。

古代から近代への流れ

公娼制度は古代ギリシャやローマ帝国の頃から存在し、性行為に対する社会的な位置づけは時代と地域によってさまざまに変遷しました。古代ギリシャでは、政府が管理する公共娼家が設立され、衣服や社会的地位が厳しく制限されていました。ローマ帝国でも、娼婦は服装や行動が制約され、登録制や課税制度によって管理されることが一般的でした。

中国でも、古代から公娼制度は存在し、特に周や漢の時代には監視された形での管理売春が行われていました。日本統治時代の韓国でも妓生制度が存在しましたが、これは公娼制度とは異なる側面を持ちました。

現代における公娼制度

本質的に公娼制度は今日まで続いており、オランダやシンガポールのような国々でも合法的に売春が認められています。近年では、安全性のための免許制度や公共の管理が導入されています。このように、公娼制度は単なる売春の枠を超え、社会や文化の変容を反映した重要な側面を持っています。時代の変遷とともに、その役割や機能が変化していることを理解することが大切です。

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