公廨銭

公廨銭とは

公廨銭（くがいせんまたはくげせん）は、古代日本において、在京の官庁や役所に対して支給される銭のことを指します。この銭は、貸付け（出挙）を行い、その利息を活用して公的な経費や官人の給与に充てる仕組みでした。日本の歴史において、公廨銭は特に財政機能の一部を担う重要な存在でしたが、その運用には多くの問題も抱えていました。

公廨銭の歴史

公廨銭が初めて用いられたのは慶雲元年（704年）のことで、当初は式部省、大学寮、散位寮などに対して銭が支給されました。しかし、この際に具体的な内容は明らかではなく、詳細は不明です。

その後、天平16年（744年）になると、紫香楽宮の建設に伴い、諸官庁の財政状況が急減しました。この状況を打開するため、各官庁に対して銭1000貫を公廨銭として与え、運用することが決定されたのです。これは官庁の日常的な経費の一部を補うことを目的としていました。しかし、実際の運用は思うようにはいかず、様々な理由から次第に公廨銭の残高は減少していきました。

さらに宝亀6年（775年）には、各地方の公廨稲の4分の1を中央に送ることが決定され、これを京の官人の給与として加えることが試みられました。しかし、この計画も開催された実施の中で、多くても1貫文、最少では100文というわずかな金額しか行き渡らず、財政支援としては非常に不十分でした。その結果、わずか4年でこの制度は廃止されることになりました。

公廨銭制度の課題

公廨銭制度は、官庁の経費を賄うために設計されたにもかかわらず、その実態は決して順調ではありませんでした。早期に見られた運用不振の原因はいくつかあり、制度の構造的な問題、または当時の社会情勢も影響したことでしょう。それにより、官人の給与や公的事情に関するニーズに応えることができず、多くの官人が十分な賃金を得られなかったのです。

このように、公廨銭制度の歴史を振り返ると、古代の日本における財政管理や官庁運営の難しさを垣間見ることができます。制度の意義は高いものの、その実行には様々な挑戦が伴い、最終的には機能しきれなかったことが明らかです。公廨銭制度は、後の時代においても、財政改革や制度設計の課題を考える上での教訓となることでしょう。

参考文献

• - 米田雄介「公廨銭」（『国史大辞典 4』（吉川弘文館、1984年） ISBN 978-4-642-00504-3）
• - 奥野中彦「公廨銭」（『平安時代史事典』（角川書店、1994年） ISBN 978-4-040-31700-7）

もう一度検索