公民教育

公民教育とは

公民教育は、高等学校における教科「公民」に関する教育活動全般を指します。中学校の社会科における公民的分野（政治、経済、社会問題など）と密接な関連があり、広義にはこれらの内容も含まれます。

概要

学習指導要領において、公民教育の目標は公民的資質の育成と定められています。高等学校では、「公共」（2021年度以前の入学者対象は「現代社会」）が必修科目であり、「政治・経済」と「倫理」は選択科目として設置されています。2021年度以前の入学者については、「現代社会」または「政治・経済」と「倫理」のいずれかを履修する必要があり、多くの高等学校では1年次に「現代社会」を履修する形式が一般的です。

しかしながら、現実には多くの高等学校でこれらの分野が軽視されがちで、専門の教員が不足していたり、授業時間が最低限にとどまっている状況が見られます。この背景には、大学入試で公民科目を必要とする大学や学部が少ないという要因も影響しています。

公民教育の内容

公民教育の内容は、大まかに以下の4つの領域に分類できます。これらの区分は、教育行政や学会で公式に定められたものではありません。

1. 政治領域：
国内政治だけでなく、国際政治も含まれます。
関連分野として、法学も扱われます。
2. 経済領域：
国内経済だけでなく、国際経済も含まれます。
関連分野として、金融や流通も扱われます。
3. 倫理領域：
哲学や倫理学の内容を中心に扱います。
科学技術に関するテーマに触れることもあります。
4. 社会領域：
現代社会が抱える諸問題（特に青年期の問題）を扱います。

これらの領域は、「現代社会」では全体を網羅的に、「政治・経済」では政治領域と経済領域を、「倫理」では倫理領域と社会領域を中心に学習します。

教員養成に関する課題

高等学校の「公民」教員免許を取得するには、教育職員免許法施行規則に基づき、以下の内容を含む科目を規定単位数（各2単位以上）履修する必要があります。

政治学（国際政治を含む）または法律学（特に憲法学、国際法を含む）
経済学（国際経済を含む）または社会学
哲学、倫理学、宗教学、心理学
公民科教育学（中学校の場合は社会科教育学）

この規定により、公民教育の全分野を網羅していなくても教員免許の取得が可能になっています。公民教育が扱う学問領域が広範囲にわたるため、教員免許を取得できる大学や学部は多いのですが、高等学校での「公民」の需要は大学受験との関連で低い傾向があります。

このため、免許取得者が多い一方で、高等学校での需要が少ないため、教員採用試験の競争率が高くなる傾向にあります。そのため、複数の免許（特に「地理歴史」）を取得することが事実上必須となっています。

なお、中学校「社会」の教員免許を取得するには、公民分野に加えて、日本史、外国史（西洋史、東洋史）、地理学の単位も各2単位ずつ履修する必要があります。

関連項目

社会 (教科) - 公民 (教科) - 地理歴史 (教科)
政治教育 - 消費者教育 - 平和教育 - 道徳教育 - 人権教育 - 法教育
社会問題 - 時事問題
高等学校必履修科目未履修問題
教科 - 教科の一覧 - 教科教育学 - 社会科教育学

外部リンク

高等学校学習指導要領「第3節 公民」 - ウェイバックマシン（2001年4月17日アーカイブ分）
日本公民教育学会

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