公海の世界遺産

公海の世界遺産

公海の世界遺産は、ユネスコと国際自然保護連合（IUCN）が設立したプログラムで、どの国にも帰属しない公海の自然環境や生態系を保護することを目的としています。この取り組みは、海洋資源の保護と持続可能な利用を促進することを目指しています。

背景

2003年のヨハネスブルクサミットでは、国際的な海洋保護区のネットワークを構築することが提案されました。この背景には、生物多様性の保全に関する国際的な合意があり、特に2010年の生物多様性条約締約国会議で採択された愛知ターゲットでは、2020年までに地球上の海洋面積の10％を保護区にする目標が設定されました。これに続く国連の持続可能な開発目標（SDGs）では、海洋資源の保全と持続的な利用が求められています。

IUCNは、これらの目標を実現するために「Global Marine and Polar Programme」を立案し、国際自然保護会議で海洋保護区についての議論をスタートしました。UNEPの報告によると、海洋保護区の設定は特定の国の領海内だけでなく、公海部にも及ぶことが求められています。2014年時点では、ヨーロッパの面積に相当する3％の保護が達成されたものの、その後の進展は限定的です。

2008年からは、世界海洋デーの施行を前に「World Heritage Marine Programme」が開始され、「Marine World Heritage」の登録が推進されています。ユネスコは、政府間海洋学委員会という専門組織を持ち、さまざまな視点から海洋保護区の制定に取り組んでいますが、最も厳正な保護を求める世界遺産の枠組みでの運用が優先視されています。

候補地

ユネスコとIUCNは、5つの公海の世界遺産候補地を挙げています。これには以下が含まれます：

• - コスタリカ沖の熱ドーム：地震活動による熱水噴出孔から形成されており、極限環境で生きる微生物が発見された場所。
• - ホワイトシャーク・カフェ：太平洋におけるホホジロザメの重要な生息地。
• - サルガッソ海：独特の流れ藻生態系によって知られる海域。
• - ロストシティ熱水フィールド：2000年に発見された熱水噴出孔の集まり。
• - アトランティス・バンク：伝説のアトランティス大陸にちなんだ化石島。

南極大陸に関連する取り組みもあり、南極海の生物資源の保護に関する委員会が長期的な海洋保護区の設定を推進しています。南極大陸自体も候補地とされており、特にスカルブスネスなどの生態系の保護が重要視されています。

課題

公海における世界遺産の候補を推薦する際、世界遺産条約の改定が必要です。2023年の国連海洋法条約に基づき、80ヶ国による生物多様性に配慮した保護区の設置が合意され、これにより公海の保護に関する新たな法的枠組みが整いました。これを受けて、ユネスコは公海の世界遺産に関連する研究を本格的に開始しました。

また、世界遺産委員会による現地調査が行われる前の段階で、深海などへのアクセス方法やそのコストをどう賄うかという課題も残されています。公海の生態系を保護する取り組みは、持続可能な未来への重要な要素と考えられており、国際的な協力が求められています。

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