公立技術学校の虐殺

公立技術学校の虐殺：ルワンダ虐殺の悲劇

公立技術学校の虐殺は、1994年のルワンダ虐殺の際に、キガリにあった公立技術学校（École Technique Officielle: ETO）で発生した痛ましい事件です。この学校はサレジオ会系のセカンダリースクールであり、虐殺から逃れるために2000人以上のツチ族とフツ族の穏健派の人々が避難していました。

事件の概要

1994年4月上旬、虐殺の激化に伴い、多くの人々が安全を求めてETOに避難しました。当初、学校は国連平和維持軍（UNAMIR）のベルギー兵によって警護されていましたが、4月7日にアガート・ウィリンジイマナ首相の警護をしていたベルギー兵10人が殺害される事件が発生。これによりベルギー政府はルワンダからの撤退を主張し、国連安保理もこれを承認しました。その結果、UNAMIRは外国人避難に焦点を当てるよう指示され、4月11日にベルギー軍はETOからの撤退を余儀なくされました。

ベルギー軍撤退後、間もなくしてフツ族過激派民兵組織インテラハムウェが学校を襲撃し、避難民の虐殺を開始しました。児童を含む約2000人の避難民のほとんどが、無残にも殺害されるという悲劇が起きました。

国連の対応とその後

この事件は、国連の信頼を大きく損なう結果となりました。十分な兵力と難民救助のマンデートを持たないとはいえ、国連平和維持軍が避難民を見捨てたことが、大量虐殺を招いた一因となったからです。事件後、安全保障理事会はUNAMIRの規模を大幅に縮小する決定を下し、虐殺期間中の国連の活動は著しく制限されることになりました。

事件に関する調査は、ベルギー政府の要求があったにもかかわらず、なかなか実施されませんでした。また、1997年には、UNAMIR司令官であったロメオ・ダレールが、ベルギー兵殺害事件に関してベルギー議会での証言を求められましたが、当時のコフィー・アナン国連事務総長によって禁じられました。

撤退命令の背景

ベルギー軍の撤退理由については、様々な説が存在します。現場指揮官が避難民の存在を伏せて報告した、ベルギー軍上層部の判断だった、あるいは現場指揮官の独断だったなど、文献によって食い違いが見られます。しかし、当時の最高指揮官リュック・マルシャル大佐は、後にテレビインタビューで、UNAMIR本部からの命令と、キガリ空港の安全確保のためであったと証言しています。また、難民は安全に帰宅できると考えていたとも述べています。しかし、国連の報告書でも、撤退の責任者は明確にされていません。

ヴィエコスラヴ・チュリッチの勇気

ボスニア・ヘルツェゴビナ出身のクロアチア人聖職者ヴィエコスラヴ・チュリッチは、ETOからの退去を拒否した唯一のヨーロッパ人でした。彼は虐殺が続く中でもルワンダに留まり、脅迫を受けながらも公然と暴力を非難し続けました。チュリッチは紛争を生き延びましたが、1998年に何者かによって殺害されました。彼は後に殉教者として、「アフリカのシンドラー」と呼ばれるようになり、彼の名を冠した学校がキヴマに建てられています。

映画化

この事件は、『ルワンダの涙』（原題：Shooting Dogs）として映画化されました。この作品は、ETOの虐殺事件と、ルワンダ虐殺を経験したプロデューサーの体験に基づいており、避難民と共に学校に隠れた2人の白人（神父と英語教師）の選択とその結末を描いています。

公立技術学校の虐殺は、ルワンダ虐殺の悲劇を象徴する出来事の一つです。この事件から、国際社会の責任、平和維持活動の限界、そして人間の勇気について、深く考えさせられます。

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