六角時信

六角時信（ろっかく ときのぶ）

六角時信は、鎌倉時代後期から南北朝時代にかけての武将で、近江国（現在の滋賀県）の守護大名です。佐々木氏の嫡流である六角氏の三代目当主であり、佐々木時信とも呼ばれています。

生涯

1306年、佐々木頼綱（六角頼綱）の子として生まれました。兄たちが相次いで亡くなったため、嫡男として家督を継ぐことになりました。1311年に父が亡くなると、家督を継承し、近江守護となります。1314年に元服し、時信と名乗りました。

時信は朝廷との関わりも深く、1330年には後醍醐天皇の石清水行幸の際に橋渡役を務めました。しかし、1331年に元弘の乱が勃発すると、鎌倉幕府方につき、近江唐崎で後醍醐天皇側の延暦寺の僧兵と戦い敗れます。その後、後醍醐天皇が内裏を脱出して笠置山で挙兵すると、鎮圧軍に加わり、六波羅探題軍に協力して山門東坂本に攻め込みました。戦後、捕らえられた尊良親王（後醍醐天皇の皇子）を預かることとなります。

1333年、後醍醐天皇が流罪となった後も反乱軍の鎮圧に参加し、摂津国天王寺に出陣しました。しかし、六波羅探題が足利高氏（後の尊氏）によって陥落すると、探題の北条仲時が近江で討ち死にしたという誤報を受け、宮方に投降します。

幕府滅亡後の建武の新政では、雑訴決断所の奉行人、南海道担当の七番局を務めました。その後、足利尊氏が新政から離反すると、時信も尊氏に従います。しかし、室町幕府においては近江守護の地位を一時的に庶流の京極道誉に奪われるなど、不遇な時期を過ごすことになります。

その後、出家して家督を子の氏頼に譲り、41歳で生涯を終えました。

まとめ

六角時信は、鎌倉時代末期から南北朝時代という激動の時代を、近江守護として、また武将として生き抜いた人物です。朝廷と幕府の間で立場を転じながらも、その都度、自らの役割を全うしようとした姿がうかがえます。彼の生涯は、当時の社会情勢や武士のあり方を考える上で、重要な事例の一つと言えるでしょう。

参考文献

安田元久 編『鎌倉・室町人名事典』（コンパクト）新人物往来社、1990年。
佐々木哲『佐々木六角氏の系譜』思文閣出版、2006年。
* 紺戸淳「武家社会における加冠と一字付与の政治性について」『中央史学』二、1979年。

もう一度検索