共 (春秋)

共（きょう）は、古代中国に存在した諸侯国であり、殷と周の時代にその名が歴史に刻まれています。殷代の共は、現在の甘粛省平涼市涇川県付近に位置し、この地は周の文王によってその支配下に入りました。一方、周代の共は、現在の河南省新郷市輝県市の北西に存在しました。

『世本』氏族篇には、「共氏、国名、周有共伯和」と記されており、この地が国として認識されていたことがわかります。また、『漢書』古今人表の顔師古注にも「共、国名也」とあり、これらの記録は共が単なる地名ではなく、独立した国家であったことを裏付けています。

特に注目すべきは、西周後期の紀元前841年に発生した国人の乱です。この混乱の中で、周の厲王は現在の山西省臨汾市霍州市にあたる彘（ち）に逃亡しました。この時、周の人々は共伯和をリーダーとして推戴しました。共伯和は、事実上の政治指導者として、いわゆる「共和」政治を行いました。この状態は、紀元前828年に厲王が彘で亡くなるまで続きました。厲王の死後、政治の実権は王子静（後の宣王）に移り、共伯和は共に帰国したと伝えられています。

春秋時代初期の紀元前722年には、鄭で内乱が起こり、荘公の弟である共叔段が共へと逃れました。この出来事は、共が周辺地域における政治的な動乱と密接に関わっていたことを示唆しています。しかし、共の歴史は長くは続かず、紀元前660年に衛によって滅亡しました。これにより、共は歴史の舞台から姿を消すこととなりました。

共の歴代君主としては、共伯和の名が知られています。彼は、周の政治が一時的に混乱した時期に、その手腕を発揮し、歴史に名を残しました。彼の統治期間は、周王朝の歴史においても特筆すべき出来事であり、後の歴史家たちによって様々な解釈がなされています。

このように、共は殷周時代という古代中国史において、小国ながらも重要な役割を担った国の一つと言えるでしょう。その歴史は、当時の政治情勢や社会構造を理解する上で、貴重な資料となっています。

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