共同体主義

共同体主義とは

共同体主義（きょうどうたいしゅぎ、英: communitarianism）は、20世紀後半にアメリカを中心に発展した政治思想で、共同体の価値を重視するものです。一般的にはコミュニタリアニズムとも称され、共同体主義者を指してコミュニタリアンと呼ぶこともあります。

概要

この思想は現代の政治思想において、ジョン・ロールズ等が提唱する自由主義に対抗する立場を持ちます。しかし、自由主義を完全に否定するわけではなく、双方の価値を調和させることを目指しています。共同体の重要性を強調する一方で、個人の自由や権利が犠牲になることは許容しません。具体的には、共同体主義は自由民主制の枠内に留まりつつ、共同体における個人のアイデンティティーの形成や役割に重点を置いたアプローチを提唱しています。

イギリスの社会学者ジェラード・デランティは、共同体主義の中でいくつかの潮流を分類しています。それには、自由主義的共同体主義、ラディカル多元主義、公民的共和主義、統治的共同体主義が含まれます。これにより、共同体主義の多様な側面が理解できます。

理念

共同体主義は、リベラリズムが提唱する「自由で自立した市民」という近代的な主体像に対して哲学的批判を展開しています。特に、アイデンティティの形成にはその歴史性が重要であるとし、個人は特定の家族やコミュニティ、国家、民族に対して愛着を持つ存在として位置づけられます。このことは、個人が自己のアイデンティティを集団の歴史の中で捉え、そこに基づいて自らの生き方を形成することを強調しています。

共同体主義者たちは、個人に一定の役割を持たせることでその生に意味を与えると述べます。個人は単なる伝統や共通善に従う受動的存在ではなく、自身の歴史を解釈し、共同体的な善を自覚的に受け入れる「自己解釈する存在」であるという立場を取ります。言い換えれば、個人は「歴史の主体」であり、彼らの生涯を貫く物語を持つ主体でもあるということです。

主要な論者

共同体主義に関する議論の中で、いくつかの主要な論者が注目されています。代表的な人物には以下のような名前が挙げられます：

• - チャールズ・マーグレイヴ・テイラー
• - マイケル・サンデル
• - マイケル・ウォルツァー
• - アラスデア・マッキンタイア
• - アミタイ・エツィオーニ
• - 宮台真司
• - 藤原保信
• - 宮崎哲弥
• - 菊池理夫
• - 小林正弥
• - 青木孝平

参考文献

共同体主義に関する理解を深めるための文献としては、ジェラード・デランティの『コミュニティ - グローバル化と社会理論の変容』や、スティーブン・ムルホールらの『リベラル・コミュニタリアン論争』などが有名です。これらの文献を通じて、共同体主義の異なる側面やその概念の発展を理解することができます。

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