菊池理夫

菊池理夫：コミュニタリアニズムを語る日本の思想家

菊池理夫氏は、1948年青森県弘前市生まれの日本の政治学者、思想史家、そして文化政策論者です。慶應義塾大学法学部卒業後、同大学院博士課程単位取得満期退学を経て、長年にわたり大学教壇に立ちました。三重中京大学名誉教授、南山大学教授などを歴任し、現在は後進の育成にも尽力されています。

専門分野と業績

菊池氏の専門は政治思想、特に近現代の政治思想史です。当初はユートピア思想史の研究から出発しましたが、その後、コミュニタリアニズムという政治哲学に強い関心を抱き、その研究・普及に大きく貢献しました。コミュニタリアニズムは、個人の権利を重視する自由主義に対抗し、共同体や地域社会の重要性を強調する思想です。

菊池氏は、コミュニタリアニズムの代表的な著作であるマイケル・J・サンデルの『自由主義と正義の限界』を日本語に翻訳し、日本の学界に紹介しました。この翻訳は、日本のコミュニタリアニズム研究に大きな影響を与えただけでなく、広く一般にもコミュニタリアニズムの考え方を伝えるきっかけとなりました。

学術活動と主要著作

菊池氏の学術活動は多岐に渡り、単著、共著、翻訳など多数の著作を発表しています。

主な単著には、『ユートピアの政治学 - レトリック・トピカ・魔術』（新曜社, 1987年）、『現代のコミュニタリアニズムと「第三の道」』（風行社, 2004年）、『日本を甦らせる政治思想 - 現代コミュニタリアニズム入門』（講談社, 2007年）、『共通善の政治学 ― コミュニティをめぐる政治思想』（勁草書房, 2011年）、『ユートピア学の再構築のために ― 「リーマン・ショック」と「三・一一」を契機として』（風行社, 2013年）などがあります。これらの著作を通して、氏はコミュニタリアニズムの思想的背景、現代社会への応用、そして日本の社会構造への示唆などを多角的に論じています。

共著としては、小林正弥氏との共著『コミュニタリアニズムのフロンティア』（勁草書房, 2012年）、『コミュニタリアニズムの世界』（勁草書房, 2013年）などがあります。

翻訳においては、サンデルの『自由主義と正義の限界』に加え、J・H・ヘクスター『モアの「ユートピア」――ある思想の伝記』（御茶の水書房, 1980年）、クリシャン・クマー『ユートピアニズム』（昭和堂, 1993年）、デヴィッド・ラスマッセン編『普遍主義対共同体主義』（日本経済評論社, 1998年）、クリストファー・ウルフ, ジョン・ヒッティンガー『岐路に立つ自由主義 - 現代自由主義理論とその批判』（ナカニシヤ出版, 1999年）など、幅広い著作を日本語に紹介しています。

教育活動と社会貢献

菊池氏は、大学において教育活動にも積極的に携わってきました。三重中京大学では、図書館長や大学院政策科学研究科長を歴任し、教育・研究機関の運営にも貢献しました。また、所属学会である日本政治学会、日本トマス・モア協会、日本政治思想学会などを通して、日本の学術界の発展にも貢献しています。

まとめ

菊池理夫氏は、コミュニタリアニズムという重要な政治哲学を日本に紹介し、その研究を深化させた、日本の政治思想史におけるキーパーソンと言えるでしょう。その著作は、現代社会の課題を考える上で重要な示唆を与えてくれます。

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