共産主義者同盟赤軍派より日帝打倒を志すすべての人々へ

梅内恒夫の手記に関する考察

梅内恒夫が寄稿した「共産主義者同盟赤軍派より日帝打倒を志すすべての人々へ」は、1972年5月10日付の『映画批評』に掲載された約6万字にも及ぶ手記です。この手記は、指名手配中の活動家によるものであり、その特異性が注目を集めました。特に、当時の新左翼に広まっていた反日思想（窮民革命論、反日亡国論、日本原住民論など）の理論形成に寄与したことが挙げられます。この手記は、梅内の考察や主張が新左翼運動にどのような影響を与えたのかを示す重要な文献とされています。

反省と謝罪

手記の中では、連合赤軍事件に関する反省が述べられており、赤軍派出身者の起こした山岳ベース事件が革命運動の評判を損なったとして、同じ赤軍派の仲間に対して謝罪が表明されました。また、連合赤軍のメンバーの中から、特定の人物を除名することが宣言されました。ここで梅内は、赤軍派を含む革命運動の実態とその失敗に対する具体的な原因を明確に分析しています。彼は、前段階武装蜂起論に固執しすぎた結果、その路線が破綻したことや、非合法活動の原則を破った側面を挙げ、この反省を通じて今後の運動に活かすべきだと主張しました。

マルクス主義との決別

梅内は、マルクス主義の進化論的な社会進化のプロセスを否定し、未開な社会を蔑視する態度からの脱却を求めています。彼は、ロシア革命以外の成功した共産主義革命が非帝国主義諸国で行われている事実を挙げ、マルクス主義の破綻を強調しました。この視点から、彼は日本人の「犯罪性」について詳述し、歴史的に征服を受けてきた人々の視点を再評価するよう求めています。彼にとって、日本の歴史は他者を侵略し、支配する加害者側のものであり、その認識が未来の世界革命戦争（彼の見解では「日本滅亡戦争」）の必要性に繋がっていくのです。

日本打倒戦略と組織論

手記の後半では、日本打倒の具体的な戦略が提唱されており、日本を泥沼の戦争に巻き込むことが必要だという考えが示されています。これは、国富を浪費させることが目的であり、殖民地下でより深刻な社会経済的な問題に対して新たな行動を起こさせるためのものでした。また、梅内は革命運動組織の理想的な形として、秘密結社性、組織構成員の質、文民統制の無用さを示唆し、その成員が持つべき心構えや価値観について詳細な指針を定めています。

結論

梅内恒夫の手記は、当時の新左翼思想に対して独自の見解を示し、特定の歴史的背景や思想運動に大きな影響を与えました。日本の近代史における革命運動の理解を深めるだけでなく、反日思想の形成にも寄与した文書として、今後も注目されるべきでしょう。梅内の思考過程とその示したビジョンは、現在の社会運動を考えるうえでも参考になる点が多いと言えるでしょう。

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