兵衛向陽閣

兵衛向陽閣の歴史と概要

兵庫県神戸市北区の有馬温泉に佇む「兵衛向陽閣」は、長い歴史を持つ老舗温泉旅館です。その起源は室町時代以前に遡り、1466年の文献には「二の湯兵衛」「谷の兵衛」としてその名が記されています。創業から650年から700年という長い年月を重ねてきました。

戦国時代には、有馬十二坊の一つ「北の坊」として知られていましたが、人々が「兵衛、兵衛」と呼ぶようになったことから、「兵衛」を公称するようになったと伝えられています。また、豊臣秀吉が有馬温泉を愛し、この旅館を「兵衛」と名付けたという口伝も残っています。江戸時代には、旅館の主人が温泉を蒸留して作った塩を藩医に贈った記録も残っており、当時から有馬温泉の恵みを活かしていたことが伺えます。

また、かつて有馬温泉の湯殿の灯明は、「一の湯」は御所坊が、「二の湯」は兵衛が献じていたという記録も残っています。このことから、「兵衛」は御所坊に匹敵する宿であったと考えられ、天皇行幸の際の供奉役「兵衛府」の宿舎であった可能性も指摘されています。

現在の建物は、1927年に「朝日に向かって燦々と輝いていく」という意味を込めて「向陽閣」と名付けられた別館が中心となっています（本館は閉鎖）。1957年には、旅館として日本初の短距離ケーブルカーを設置するなど、先進的な取り組みも行なってきました。

2010年には、有馬温泉エリア初の本格ブッフェレストラン「ブッフェレストラン花の舞」をオープンし、新たな食のスタイルを提供しています。

施設

現在の兵衛向陽閣は、南館、西館、北館、東館の4つの建物が8階で連結された構造となっています。

南館: 地下1階から地上8階で、客室は41室。
西館: 8階から15階で、客室は57室。
北館: 8階から15階で、客室は41室。
東館: 8階から10階で、2室の客室があります。
フロントは南館1階に位置しています。

美術コレクション

兵衛向陽閣は、数多くの美術作品や工芸品を所蔵しており、その一部は館内でも展示されています。所蔵品は、伊藤博文の書、九鬼嘉隆の南蛮鉄甲冑、横山大観の『蓬莱峡』、僧愛石の『虎ノ図』、皆川月華の『カトレアの図』、今岡徳夫の『雲海』『薫風』、橋本良江の『オロペサ原野』『朝靄のロット川』、福田眉仙の『蓬莱峡』、田能村竹田、海老名正夫の『大原女』、関口正男の『涼宵』、下町爽風の『アムール河』、川崎千足の『銀游』など多岐に渡ります。

CMソング

兵衛向陽閣のCMソング「有馬兵衛の向陽閣へ」は、作曲家キダ・タロー氏が作曲し、歌手の仲宗根美樹さんが17歳の時に歌唱しました。このCMソングには、実際にCMで流れていない部分が存在するとされ、キダ・タロー氏自身も「3番まである」と証言しています。しかし、兵衛向陽閣、キダ・タロー氏ともに、音源や楽譜は現存していないとのことです。

2018年には、作詞家もず唱平氏が作詞、キダ・タロー氏が作曲したフルバージョンが再製作され、テレビ番組で発表されました。歌唱は歌手の塩乃華織さんが担当しました。

その他

温泉宿
SMAP: 2013年4月8日放送の『SMAP×SMAP』のスペシャル企画「SMAPはじめての5人旅」で宿泊しました。
* AKB48: CMに出演しました（柏木由紀、宮澤佐江、峯岸みなみ、高城亜樹、河西智美の5名）。

兵衛向陽閣は、その長い歴史の中で、多くの人々に愛され続けてきた有馬温泉を代表する老舗旅館です。

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